三国志7、8 / 北方謙三

三国志〈7の巻〉
三国志〈8の巻〉
さて、赤壁。圧倒的な兵力を抱える曹操。敗れたとはいえ勢力を保ち、呉を利用しようとする劉備曹操を破り、益州を得て天下二分を目指す孫権周瑜。ついに長江で激突します。妙にさわやかさんな周瑜と風を呼ぶために祈ったりしない普通の人間な孔明の心の交流が清清しい。ケレンに満ちた記述が一切ないのも北方三国志の特徴です。芝居がかっていないというか、有名エピソードでも過度に感傷的なものはばっさりと切り捨ててしまいます。関羽曹操見逃したりとか。所詮三国志演義も小説ですしね。赤壁で敗れた曹操の逃避行とその追跡が妙にリアル。命からがら逃げ帰った曹操、ようやく天下への足がかりをつかんだ劉備。志半ばで倒れた周瑜。出来事よりもそれぞれの想いに重心をおいて語られていきます。
荀紣曹操の皇帝の扱いにおける対立はここに到るまでずっと書かれてきたことによって結末に説得力があります。また曹操がずっと持ち続けている劉備への複雑な思いがここでまた更に大きくなります。天才でありながらコンプレックスを抱え続ける曹操というのもなかなか面白いですね。
さりげなく登場し、華々しい活躍の場を貰えず、しかし存在感を残して消えていった龐統が可哀想。しかし、その死も北方三国志では後の展開の伏線となっていきます。