キヤノンよお前もか

請負法制「無理ありすぎる」 御手洗氏、経財会議で発言と。あんまりです。僕も過酷なITの現場(笑)で働いている関係で、偽装請負の実態と言うのはよく分かっているし、請負契約で仕事を回すことでの双方のメリットも承知している。製造の現場では人件費は原価に直結するものであるから、常に増加に向かうならともかく、生産量現象のリスクのあるこの経済の状況下では、全て正社員で賄うことによるコスト増大が経営を危うくする(もちろん、簡単に首を切れる状況ならそうでもないけど、それは本末転倒)ことを考えると、経営判断としては正しい。
しかし、請負契約ってのは技術のあるところが文字通り、業務を請け負うものである。インプットとしては「何をしてください」があり、アウトプットとして物がでてくるわけだ。インプットに「仕事を教える」というものが含まれるのか。そうではあるまい。つまり、請負契約だけど実質派遣ですよ、でもそれを認めてくれなきゃやってられませんよ、というわけである。御手洗会長の会社であるキヤノンの昨年末時点でのキヤノン株式会社における売上高・経常利益・純利益を見ると利益がものすごい伸びを見せている。売上高が2倍にも満たないのに純利益は4倍以上。コスト削減に努めてきた、商品の付加価値率が上がったというのもあるかも知れないが、この利益の伸びのうちのいくらかは確実に人件費の削減、子会社への過剰なコスト削減要求のおかげであろう。
会社が果たすべき社会的責任は、利益を伸ばすことなのか。伸びた利益はどこにいくのか。更に利益を伸ばすために使われるのだろうか。本来、会社とはより多く人を雇い、経済を回していく原動力になるべきものであり、企業が大きくなればなるほどその責任は大きい。社員数10人売り上げ10兆円なんていう会社ばかりなら世の中立ち行かない。請負・派遣と言った雇用形態(請負は雇用形態じゃないけど実態として)は自ら生み出した富を還元しなくてもよい、企業にとっては楽なものである。資金繰りにアップアップになっている会社が行っているのであれば、経営策として間違っては居ない。しかし世界に冠たる大企業として利益を抱え込みながら、正社員登用は会社にとって苦しいとは何事か。世界に物を売っているからといって日本の家計を蔑ろにするツケはいつか必ず回ってくるはず。日本的経営はもともとはWin-Winな経営だったはずだが、どこでおかしくなってしまったのだろうか*1

*1:それを考えるとバブル経済を作り出した銀行などの責任は重い