見て見ぬふりのできないウェブ社会

最近モヒカン族についての話がよく話題になるのはやっぱり無断リンク禁止問題と絡めてなんだろうなあと思うのです。今に始まったことではありませんが、原理主義者の主張が通りやすいという点で、無断リンクモヒカン族の好むところの話題と言えましょう。僕も含めて。ところではてブのお気に入り経由でちょっと古いエントリ(なのであえて挙げない)ですが、ネットでの儀礼的無関心が可能かどうかの議論を読んで思った。参照先が見れなくてその当時どんな議論がされたかよく分からないのですが構わず。

伝達力・保存力の違いが不幸の元

その場で見たものは、とりあえず見て見ぬふりをして自分の胸にしまっておきますが、あまりにどうでもいいことでない限り、その後の会話のネタにされることが多いと思います。日記に書いたりクラスで友達に話したり、お昼時の話題になったり。しかしその話題は現実の世界では周囲の関心を引き、噂が噂を呼びという自体が発生するか、たまたま新聞記者が後ろの席で聞いていて記事にしちゃったとかそういう事態がない限り、雲消霧散していきます。
しかし、ウェブでひとたび話題にするということは、全世界への伝達能力を持ち、またウェブ世界が跡形もなく消え去らない限り残り続けるというリスクがあるものです。つまり、現実世界では、公的空間と半私的空間(生活空間?)が分かれていて、その相互間の伝達力はわりと低いのに対して、ウェブ世界では私的空間が確立されていないため、全て公的空間に直結し、強力に伝達されていくわけです。素人さんにはそれが分からんのですよ!

リアルと区別がつかない新規流入者さんへ

というわけで、原理主義者やその方角を向いている人々は、ウェブとは本来何ぞやという問いかけにより、公的空間なんだよ、公衆の面前なんだよ、脱いだらイカンノダヨと言うことを啓蒙したい。しかし、便利ツールとしてのウェブ世界しか知らないでやってきた異人さんたちはそれがわからないのです。うっかり「無断リンク禁止なんてない」って言ったら「人の嫌がることはしないで下さい」と返される。うん、あえてリンクすることではないよ、確かに。でも、いつか貴方が過去もしくは現在の武勇伝を開陳してしまったりしたら目も当てられませんものね。怖いモヒカンのお兄ちゃんたちの言うことは聞いておいたほうがよいこともありますよ。まあ、モヒカンさんのお話は基本的に回りくどい話かストレートすぎる話ではありますからね。

僕の考えるマナー

マナーっていうのはそれを守る意思のない人にとっては意味のないもので、善意に期待するものでしかありませんが、それでも「こういうことするやつはちょっとあれだよね」という「マナー違反の人の信頼度を下げる」指標にはなりえます。と言ってもマナー自体は時間や制度、考え方の変化や適用されるシチュエーションで変化するものですから臨機応変というか、十把一絡げ的な適用はかえって反発を招くのみです。シチュエーションの限定されないマナーは役に立ちません。といいつつ、ここまでの話を元に一つ。

  • リアルでのプライベートな話を個人を特定できるようにウェブに持ち込むのは本人のみに許される

公的空間としてのウェブの伝達力、保存力を考えると、持ち込まれた人、持ち込んだ人双方にとって不幸な出来事になることでしょう。だからやらない。本人がやる分にはもちろん問題ないですよね。覚悟があるかどうかは別として。ここでいうプライベートとは、見て見ぬふりをした不思議空間も含むとしましょう。もちろん、所謂公人がメディアなどで発表した話などはこれに当たりません。噂話、楽屋話、裏話は微妙ですね。マイナスな情報のときに名誉毀損に当たるようなものはダメってことにしましょうか。今した線引きはあくまで一例に過ぎず、どこまでが持ち込めると判断するかはやっぱり難しい。これは、現実世界でもしばしば判断を誤り、結果としていじめに繋がったり、失脚に繋がったりするものだったりしますから、ウェブだけの問題であるとは言えないと思います。線引きをすること自体が主体者のモラルと状況に依存するわけです。マナーなんてそんなものでしょ。

じゃあ、ウェブで発信されたものはどうか

これはもう再三述べているように、発信しちゃったものだから伝達されるのはしょうがないし、言及でもリンクでもコメントでも何でもしたい放題されたい放題。これは現実。一度発信したものは引っ込まないのです。たとえ、仲間内しか見れないところでこっそり言及したりなどしてもその行為は結果としてポインタを増やしたことになり、その連続が広まっていきます。もしかしたらそれだけの価値がない情報で、上手く消えてなくなることができるかもしれませんが、自らの意思でそれを行うことができない現状では、どうしても発信することのリスクを念頭において欲しいわけです。

結論

現実でも悪意のある(または使命に燃えるetc...な)パブリッシャーにたまたま引っかかってしまった場合、通常儀礼的無関心によりスルーされる行為が喧伝されるということがままあります。ウェブ社会では、それだけではなく、本来独り言や仲間内のひそひそ話に属する行為からも広まる可能性があります。スルーしてよって思うかもしれませんが、本人たちはスルーしてこっそり話しているつもりかもしれません。あなたがこっそり発信しているつもりなのと同じように。見て見ぬふりをして陰で話す行為は仕組み上できません。そして、気になったけど心の中にとどめておいた話ってどうやったって誰かにしたくなっちゃうものです。王様の耳はロバの耳なんですってば。言っちゃダメだと分かっていてもつい言っちゃうんですって。
だから、覚悟を決めましょう。