JASRACの横暴

痛いニュース(ノ∀`): ジャスラック動く 外国曲をハーモニカなどで生演奏、73歳スナック経営者逮捕
まあ、前々から言われていて、週刊ダイアモンドの記事にもなっているくらい闇金に勝るとも劣らない集金っぷりを発揮しているJASRAC。まず初めに言っておくと、著作権侵害親告罪なので、著作権を持った団体が訴えることは正当な行為。JASRAC著作権者から管理を委託されている団体*1です。問題なのはそこじゃなくて、包括契約という存在。JASRACのHPに詳しく書かれていますが、例えば、「スナックなど飲食店でのカラオケ、楽器演奏」の場合、33.0m2(10坪)まで 3,500円、33.0m2(10坪)を超え66.0m2(20坪)まで 7,500円、66.0m2(20坪)を超え165.0m2(50坪)まで 12,000円 の月額料金が発生します。JASRACの管理している楽曲がどのくらい含まれているかはお構いなし。さらに

[生演奏やダンス、ショーなどの伴奏のための市販CD・テープの再生演奏] 楽器演奏、歌手による歌唱など、いわゆる生演奏や、市販CDなど録音物の再生演奏(ダンスやショーなど)については、キャバレー・スナック・ディスコ・レストラン・喫茶店など業種別に使用料を定めており、座席数とお客様一人あたりの飲食代(標準単位料金)および演奏の方法によって月額使用料が決まります。

PDFを見るとものすごく細かいです。一体根拠は。そんなわけで、正直に払うと莫大な額がJASRACに流れ込むことになります。しかし、どの曲がどのくらい使われたかなど一切集計されないどんぶり勘定です。
JASRACはあくまで管理料を取り立てる団体なので、盗作騒動などから守ってくれるわけではありません。しかし、自分たちが管理料をとりっぱぐれると思ったら信託された(本質的には自分のものでない)著作権侵害を盾に刑事告訴も辞さないということです。
いろいろ問題はありますが、まずここ最近の問題としては、今まで見逃していたものを過去にさかのぼって取り始めたもの。お前商売やったことないからわからないかもしれないけど、日銭を稼ぐのは大変なんだよと。最初からコストとして計上されてるものならともかく、今まで徴収しなかったのはJASRAC側の瑕疵であるといっても言い過ぎではありません。そして、著作権切れのものを中心に流してようが、そうでなかろうが、全て十把一絡げ。JASRACの仕事は正しく管理することであるから、面倒だという言い訳は通用しません。結果として管理コストが高くなってその分使用料が上がっても、本来払わなくていいものまで払っていることよりはよっぽど正しいでしょう。そもそも、使用料は実質独占団体として言い値で請求されているものであるから、根拠はありませんし、音楽業界としていちばん稼いでいると思われるJ-POPや演歌の人々はCDの売り上げやカラオケ、有線の使用料で十分なはずです。売れない人を保護する仕組みじゃないのっていっても配分率は謎なので現状説得力がありません。

現状を容認した上であるべきは

そんなわけで、本来の姿はどういうべきものであるか。いくつか提案してみます。

  • 包括契約か明細ベースかを必ず選べるようにする
  • 二重取りをしない(有線を店に流すなど)
  • 管理リストをHPなどにきちんと掲載する(対個人)
  • 過去にさかのぼって請求しない。ただし、請求後滞納している場合を除く
  • 配分の根拠を提示する
  • 店の売り上げに対する上限を規定する

最低限こんなところでしょうか。とにかく、JASRACが管理していないものにまで使用料を払うのはこちらの都合としては手続きがあっても避けたいのにJASRACの都合で出来ないというのはお金を貰う団体の態度ではありませんね。税務署ですらもっとちゃんとしています。鼻歌を歌っても使用料を取られると言うのが冗談ではなくなりそうな勢い。音楽をやるものが生きていくためには著作権の主張と管理団体の存在はある程度しかたがないのかもしれませんが、こんなやり方では町の中から音楽が消え、誰も聞かなくなってしまうだけです。

JASRACは焦っている

急激なテクノロジーの変化により、音楽の提供形態もどんどん変わってきています。JASRACはHDDに私的録音保証金*2を課そうとする勇み足を踏んでいますが(本当にそんなことになったらIT業界が全力でJASRACを潰しにかかりますよ)、それは焦りが表面化したものでしょう。「仕掛け」によって、今までとは違い容易に「いつ、誰の曲が、どのくらい」流されたかを集計できるようなヴィジョンが見えつつある今、音楽著作権業界の覇権をあまねく確立しておきたい。しかし既に何団体か著作権管理団体が設立されています*3JASRACを超えるにはいずれも力弱いです。決め手は仕掛けと登録してくれる人の数、知名度。なかなか難しいことです。

JASRACに望むこと

社団法人としての役目は10億円の黒字(H17年度)を出すことではありません。自らうたっているように「人々にとってかけがえのない音楽文化の普及・発展に尽くして」くれることです。著作権管理のあり方を追求することはよいのですが、文化は受け手あってこそ発展することを忘れてはなりません。ただ消費されていく音楽ではなく、真の芸術を後世に残すこと、そのために何をすればいいかを是非考えて欲しいと思います。

*1:JASRACの著作者向けFAQのQ8には著作権が移転すると書かれているがこれはおかしい

*2:「従来自由かつ無償であった私的な録音について、権利者の被る経済的不利益を補償するため、政令で指定されたデジタル方式の機器・記録媒体を用いて行う場合には、録音自体は自由としつつ、権利者(作曲家や作詞家などの著作権者、歌手や演奏家、俳優などの実演家、レコード製作者)にたいして補償金を支払うこととするもの」

*3:http://www.nmrc.jp/hikaku4.html