フーコーの振り子 / ウンベルト・エーコ

フーコーの振り子〈上〉 (文春文庫)

フーコーの振り子〈上〉 (文春文庫)

フーコーの振り子〈下〉 (文春文庫)

フーコーの振り子〈下〉 (文春文庫)

僕の読書スタイルは、飛ばし読みに近い。重大と思わないところはある程度さらっと流して読んでしまうので、大抵の本は電車で職場を往復する間には読み終わる。のだが、この本は2週間かかったよ。手ごわかった。昔から名前だけは良く聞く本だったので一念発起して読んでみたんだけど…
さて、内容はというと、一言で言うとテンプル騎士団を題材にした衒学趣味による歴史の裏を暴く妄想が爆発爆走してしまうというお話にもならないお話。導入部で何か事件が起きていることをうかがわせる描写があって、その後はひたすらそこまでに至る過程をカルト的知識を交えて執拗なまでのこじ付けで論証していく様子が述べられている。これがひたすら長い。最後の最後まで来てようやく冒頭の事件に戻り、そして終幕を迎える。
言うなればこれは歴史ミステリの壮大なパロティーであり、妄想を爆発させれば何でも論証することが可能だという現実を提示している。真実は事実からではなく人の行動から生まれるわけだ。
とにかく、知らない名前、知らない知識の洪水に圧倒され、なかなか読み進められなかったのだけれども、その知識の奔流に身を任せるのは意外と快適な知的旅行ではありました。オチも何にも無いようなものですけれども。
日本語訳が秀逸。直訳に近いものでは得られない、洒脱な文章(やりすぎのきらいもありますが)を書く訳者を得ていますね。妄想爆発3人衆の鼻で笑うような会話が聞こえて来そうです。
にしても、難しかった。またいつかじっくりと再読してみよう。