ITビギナーとの対話に含まれる重要な示唆

まだ話の途中のようなのですが、興味深く読みました。と言っても、流し読みしている部分があるので誤読していたらすみません。
http://hunbook.hp.infoseek.co.jp/column/jitsumei.htm
意外に思われるかもしれませんが、僕はどちらかというと、N.I.さんの認識こそがあるべき姿だと思っているし、そこに到るためのハードル(ヤスツさんが述べられている様々なリスク)が軽減された状態になるべきと考えています。それはわりと何度も言っていることなのですけれどもね。
とはいえ、少し実名の扱いについて話しているポイントがずれている気もしますし、現時点でN.I.さんの姿勢を貫き通すことはかえって問題になる部分もあると言うのがいわゆる「こっち側*1」の認識である、というのがN.I.さんに全面的には賛成できない理由ではあります。
以下、N.I.さんの発言を一部引用しますが、ここについて、重要な示唆があるように思えます。

> 私は日常的にネットを利用しつつネット社会の成熟とはなんぞや、と日々考えています。
私自身は車社会には大変批判的ですが、通信社会(ネットコミュニケーション)には非常に大きな期待をもっています。いろいろな可能性を秘めているのではないかと思います。ただ現在のネット社会を見ていますと多少伸び悩んでいるように思います。その原因の大きなものにネット社会のルールがしっかり成立していない事と匿名が基本である為ではないかと私は感じています。
> 「匿名であるが故に、普段なら言えないようなことが言えてしまう」 という特徴には、匿名であることのメリットとデメリットの双方が含まれています。
> 例えば、立場上発言を許されない人のガス抜きも匿名でならできるでしょう。また、サイレントマジョリティとなりがちな人々の「本音」を聞き出すことができるのも匿名であればこそでしょう。タテマエとホンネが合致する日本人は決して多数派ではありません。しかしながら、匿名で発言することを許された場では、日本人が隠しがちな「ホンネ」を公に掘り起こしていくことができます。国民の性質として日本人は「シャイである」と言われますが、ネットの匿名性の高さはシャイな日本人にも「腹の内」を明かさせるメリットを持っていると考えて良いでしょう。
立場上発言を許されない人のガス抜きの為だけに匿名を基本にされても困ると思います。基本は実名であっても2チャンネルのような「場」を設ければよいだけではないでしょうか。
匿名が基本とおっしゃる方のご意見は往々に発言者の擁護に視点をおいていらっしゃいますが匿名であるがために全くの第三者が被害にあうケースはないでしょうか。
また誰の発言か分からない為デマがまかり通ってしまう事も考えられないでしょうか。
発言者が誠実な態度でネットに臨むことを前提とすれば実名・匿名どちらが総合的にマイナス面が多いのでしょうか。

http://hunbook.hp.infoseek.co.jp/column/jitsumei.htm

ここで、実名原則論は、「場」の議論である、ということが示されているように感じました。ウェブこそその「場」そのものである、という視点と、ウェブでも場の切り分けが必要と言う視点。前者は匿名を支持する最大の論拠になり、後者はシステム化(法整備など現実の社会のことも含めて)の提案にたどり着きます。
実名を肯定的に捉えた場合に、それでも出てくるこの「場」という考え方は、ウェブがそれまでの社会生活と違った仕組みを持っているという認識がそれなりにされつつある証拠なのかな、と思いました。
この対話を見て全般的に感じたのは、ベテラン*2ネットユーザーと、そうでない人の大きな違いは、個人情報の一元化に対する危険の過大評価と過小評価という差があるのかな、ということです。硬いシステム屋さんはシステムリスクを最大限に見積もる傾向があるし、硬い法律家さんは犯罪抑止力と事後の追跡性を最大限に見積もるし、一般のユーザーは個人情報保護法の意義をあまり理解していない。そういう見えているものの違いが匿名実名の議論の中に雑多にぶち込まれているのが現在の状況にも思えます。
現実的立場からの極論ではなく、甘い甘い理想論をうち立て、実現方法でそれを削っていくことで現実と言うものを表出させていく、そんなアプローチもあってよいのかな。

*1:Web2.0がどうとかって話ではないよ。念のため

*2:ここでいうベテランは、単に歴だけの長さのことではないです