正社員という安住の地

さて、戦友たちも大体言いたいことは言っただろうし、単なる一般的な労働環境の問題でもないということはかなりの人が理解してくれたのではないかと思う(だからといって、僕らが正しいと思わなかった人もたくさんいるだろうし、おそらくその見方はその視点においては正しい)けれど、現実は厳しい。叩かれるかもしれないけれど雑感として。
僕はなんだかんだいっても、運のいい側の人だ。これは結果的な話でしかない。未だに就職難への恐怖は根強い。何しろ内定は結局今の会社にしか貰えなかったし、たまたま引っかからなかったら、ブラック企業に勤めてたと思う。しかし、学歴の面から言ってもIT知識の面から言ってもトップクラスの人材である(僕は文学部だが同期にはそれまでPCを触ったことすらない人がいるくらいの会社だ。というとブラックっぽいけれど、未だにホストの仕事で喰っていける会社なんてそんなものだ)僕は、するすると上に上がっていくことができた。他にも優秀な同期はいるけど、僕は早くからあるポジションを確保することができた運の良さがあった。
余談にすぎないが、仕事で僕が(一浪一留文学部というスペックのせいもあってか)落とされたベンダーの同世代SE達の両極端っぷりには腹が立つ。使えない奴はトコトン使えない。その給料よこせと。ただし何故かプラマイ1年くらいの人たちは優秀な割合は高い。
経営側に近づくにつれ、会社の悪い面も見えてくる。特に、このまま、ただこのまま日々を過ごしていければいいやという雰囲気が中堅社員に蔓延していることに危機感を覚えた。バブル崩壊や就職難を乗り越えた結果、安住の地としての正社員という身分に満足しているのだ。会社なんていつでも潰せるんだよ?
そこそこの待遇でしかない会社でそこそこの仕事をし、自分を大事にすることは、ある種勝ちではある。でも、そのことは、主に運に依存した結果なんだよね。長く続けて自分の世界を作るのは、安定性という点ではありがたいけど、戦略的な駒にはなってくれない。そういう価値を持った人材が増えないと、会社としては持たない。
同期について言えることはあまりない。安住しつつも自分のポジションを切り開いていて、ただ居るだけではなくなっている。何人かは一つ頭が抜けていくだろうと期待している。ただ、実務屋さんであることは多い。視野という点ではいつでも現実に押し込められているから限界はある。
下の人たちは、お気楽だ。辞めることが板についてている(変な表現だけど)。しかし、せっかく会社の金で勉強させてやろうとしても、土曜に来たくないとか。仕事は仕事、趣味は趣味、というのはできる奴の特権で、人生の大部分を占める仕事「にも」価値を見出していかないと世の中は次第に回らなくなる。
ロスジェネ問題というのは、こういうところにも影を落としている。そこそこやって安住の地にしがみつくことが幸せという価値観。間違いでもないけれど正しくもない。僕みたいな、たまたまここにいる人材が過度に尊重される。もちろん、仕事面での優秀さにおいて、僕よりすごい人が沢山いて、だから会社は成り立っているけれど、それだけでは生き残れないはずなのに。
最後まで、そういう立場なのだろうか。奴らを敗残者とされる同士たちと取り替えたらどうなるかと妄想する。
そこそこに生きることにもそこそこの義務があり、そこそこに生きられない人に対するポーズもあると思う。少なくとも「なんでアイツより」というイメージを多くの人に抱かせるようでは、悲しすぎる。