メインフレーム的事情

増田での議論が面白いことになっている。
日立製作所はまともな会社になるべき
日立のメインフレームがバカ高い話
http://anond.hatelabo.jp/20080720205422
Unixマシンも高い話
http://anond.hatelabo.jp/20080721015612
理由についての解説。主に垂直統合による高コスト化とリスクヘッジの話
今サーバー更改とかやり始めているところなので他人事ではない。

なんでメインフレームを使うのか

上記増田にも書かれているけど、メインフレームの高可用性というのは無駄にすごい。いや、新聞に「ATMがXX分停止」とか載らないようにするためには無駄じゃないんだけど。システムダウンを検知するとコンマ何秒かの間に待機系に切り替わる。富士通なんかはメインフレームの開発をやめたって言っていたけど、じゃあそういう高可用性のあるシステムをどうするか、というとIAサーバで作っているんだよね。PRIMEQUESTなんてメインフレーム並み、って宣伝してたよね。
あと、メインフレームで使われる、階層型DB(あるいはネットワーク型DB)はシーケンシャルな処理に強いため、バッチ処理に向いている。いまどきのRDBがそれに劣る性能だとは思わないけど、適度に正規化された表よりベタベタな階層型の方が早いシチュエーションはまだまだあるでしょう。正直いらんけど。
でも、メインフレームじゃなくていい理由が整ってきた昨今、未だレガシー残存なところ、特に金融機関とかが多くあるのはなぜかというと、信頼性は単なるお題目に過ぎなくて、本当は、

  • おまんまの食い上げになってしまう技術者の救済
  • 一斉にリプレースする体力のない巨大システム

等の理由があるからです。前者はわかりますよね。他の世界では生きていけない技術者、特に、コンピューター導入初期は金融機関なんてのは先駆者ですから、社内の精鋭たちがシステム開発に血道を上げていたわけで、そんな人たちの働く場を取り上げるわけには行きませんよね。で、そこに巣くうベンダーや開発会社も同様なわけです。
もう一つ。例えば、端末が更改されるときにダム端末はWindows端末に置き換わって、色々出来るようになっていますが、肝心のホストの方はそう簡単に変えられない。次にホストが変わるときに端末の仕様を一斉に変えるのも困難。これは、テーラーさんの教育コストや事務フローが変わることによるリスクなど様々な要因からなる困難さです。対外システムがレガシーだったり、大口顧客が3490のテープを持ち込んできたり。少しずつリプレースしてくにしてもなかなか一度にやることは難しいです。多分ウン兆円規模の開発になるけど、そんなにいっぺんにやったら確実に障害だらけでしょう。

国産メインフレーム

かつての通産省の国策化としての国産メインフレーム開発は、単にIBMだけに儲けさせないとか日本の威信とかではなくて(そういうのもあるかもしれないけど)、輸出が止まったり、規制で優秀な機械が入ってこないとかになると困るからではないかと思います。まあでもそれを利用して儲けようとした人はいっぱいいるよね、きっと。

垂直統合とか

何か起きたときにあっちのマシンはあの会社、こっちのこのパーツはこの会社とかになっていると、原因分析までものすごい時間が掛かりますよね。壊れたら捨てちゃえばいいPCならいいのだけど、業務システムの障害原因がわからないというのは後に禍根を残しますからね。融通が利くとか無理が利くってのは大事なことですね。
でも、そこをリスクと諦めて要らないことにしちゃえば良いのです。オープン化の恩恵は優秀な社内システム部門あってこそ。

メインフレームのプリンタすごいよ

紙が宙を舞っているよ。すごい勢いで出てくるよ。疾走距離も長いよw
まるで「専用の紙じゃないと故障します」っていう言葉に説得力を与えるためにあるかのような速さだよw
家庭用プリンタ商法の原点ってここじゃないかと思う。

そろそろメインフレームはホストじゃなくなってきた

IBMがOS/390をz/OSとしてリニューアルし、ハードウェアもsystem zと銘打って新規にブランド構築を始めてからだいぶ経ったけど、だいぶz上のzLinux(SUSEベース)をVMとして多数立ち上げてサーバー統合を図るというプロジェクトも増えてきている。オンデマンド戦略ってのは使った分だけ払ってねってのを言い換えただけだけど、その為の仕掛けはきちんと用意してある。
メインフレームとサーバー機とPCの差は載っているOSではなく、ハードをどれだけ自分で弄れるか、という部分になってきていると思う。ソフトウェア作っているものからすると、どれでもあんまり変わらなくなってきた。さすがに銀行の巨大ホストシステムも、ホスト⇒オープンという流れになりつつある。ここでいうオープンは標準技術みたいな意味合いね。ホストの反対語はクラサバだろって話じゃなくてね。でも、ハードウェアとしてのメインフレームはもうホストとか関係ないんだよね。ホストをやるんだったらメインフレーム、オープンやるんだったらメインフレームでもUNIXサーバでもIAサーバでも何でも来い、みたいな。
上に載るものが同じになってきたら、当然価格性能比が比べやすくなるし、維持メンテコストも少なくとも開発したプログラムの保守費用の差はなくなってくる。運用コストとかハードウェアのメンテコストとか、そういった部分の勝負になってくるよね。グリーンITの絡みも合って、省電力とか床面積とかも重要になってくるのですが。
だんだんボッタクリは出来なくなる。これは業界が今まで不健全だったわけじゃなくて(もちろん、部分部分で大変不健全なところは存在するが)、成長産業が成熟産業になってきた証だと考えられる。後は客が何にお金を払うかですよ。安心感とか、人間関係とか。ただ、お役所の調達なんかは一定金額以上はグローバル調達で入札させなきゃならなくなったので、どんどんそういうことには厳しくなってきますね。それはいいんだけど、RFP出させて、発注までに時間が掛かることになったから、よっぽどの大手じゃないとマッチする要員を待機させておく余裕がなくなっちゃったってのはいいのか悪いのか。