レガシーマイグレーションのキーマンはレガシー職人

先日のエントリ(メインフレーム的事情 - novtan別館)にありがたいレス。

メインフレームの技術者の人が他の世界では生きていけない技術者だとは思わないですが、それよりも重要な問題について触れていないなあと思った。
それは、メインフレームを見ることのできる技術者の絶対数が減ってきていることです。
特に団塊の世代と言われている世代の技術者の方々が退職してしまっている昨今では絶対数は更に減ってきていて、それらを受け継ぐ技術者不足が深刻な問題です。

2008-07-22 - おおたに6号機blog

これは超大事な指摘ね。
かつては1から10まで把握して、色々と自分でなんとか出来なかったレガシーなホストシステムだけど、使うところが少なくなり、各社の仕様には互換性がなく、でも現場ではCOBOLが書ければ何とかなっちゃったりする。IMS/DBを使えますって言ったって、結局マクロ叩いているだけだったりするから、根本的な技術はわからない。SAILだって理解して使っているわけじゃなく、綿々と受け継がれてきたノウハウを繰り返しているだけだ。
これ、ベンダー内でも起きている問題。
うちが関与した某プロジェクトでは予定と比較して全くパフォーマンスが出なかったんだけど、うちの生きる化石的職人がちょちょいとチューニングしてやっつけた。某ベンダーは指を咥えてみているだけ、と。
でも、こういう技術は膨大な仕事の蓄積から身に付けた部分もあって、何でできるのか、あるいは他の人が何でできないのかわからない、一子相伝の秘術みたいになっている。それはまずいよねえ。
廃れていく技術として、全てを受け継ぐ必要はないのかもしれないけど、来るべきレガシーマイグレーションのプロジェクトでホストの技術者がいないというのはやっぱりマズイ。データ移行とかがヤバイ。
ホストのプロジェクトでやっぱり技術を受け継がせたいんだけど、何しろ大物なんで、大物の案件でしかガッツリ開発をやる機会がない。IT不況の中、それほどの案件というのはやっぱりそうは出てきませんよ。
そんなものだから、表面上、あるいは業務の部分だけは何とかなるけど、根本的なトラブルが発生したらお手上げ、というプロジェクトはいっぱいあるんじゃないかって思っています。

というのもインターネットなどで広く普及している技術のほとんどはオープン系なので、メインフレーム上でのスキルをどのように教育・伝承するかは社内やプロジェクトで閉じてしまっている事が多いからです。
つまり技術者が育つまでに時間がかかり、しかもそのスキルはレバレッジが効かないことが多いんじゃないでしょうか。
非常に難しい問題です。

2008-07-22 - おおたに6号機blog

そんなわけで、頑張ってノウハウの見える化をしようと試みるも、本人達にそんな気力もなかったりして。引退間際だし。最後に一花咲かせるようなプロジェクトがあればよいのですけれども。
レガシーシステムのリスクというのは正にこういう点にあって、オープンだったら最悪リプレースとかコードまで見て何とかする、ってできるけど、ホストはアプローチの仕方さえも資料がなくてわからなかったりします。団塊引退世代の人が「今から学ぶホストの教科書」とか書いたらそこそこ売れそうな気がするんだけど。IBMのマニュアルってわかりにくいんですよ!
僕はホストの技術者じゃないけど、下のレイヤーの根本的な技術はお勉強したいなあ。
あと、その下で言及されている、メインフレームとオープンの話はちょっと勘違いかも。メインフレーム vs UNIX/IAサーバというのとホスト vs オープンっていうのがごっちゃになっているかな。メインフレームの上でオープン技術を活用するとき、もはやメインフレームVMより上の階層は(HWまで含めた)オープンシステムとあんまり変わらんのよね。それでいて実際のI/Oはメインフレームだから…