「空きベッドがあるではないか」

うん、貴方のおうちのベッドも空いておりますよ。医者はいないだろうけど。
ホテルのように部屋とちょっとした付帯サービスに金を払うと同様、ベッドに金を払うんであれば多分空いているベッドは空いているベッドなのだけれども。こういう単純な事実は、しかし何故だか一部の人には理解されない。
ファミレスで注文取りにくるのが遅い、料理が出るのも遅い、となったとき「ああバイト少ないんだろうなあ、まあ安いし」と思うのと「こっちは客だぞ、早く来いよボケ」と思うのかは性格というか人格の問題なんだろうけれども、万事が後者の発想になっている人はつまるところ事情を詮索するという意思がないのである。あるいは、自分の事情が全てに優先するのだ。理解できるか出来ないかの問題ではないのだ。

「そのベッドは空いているだろう。どこが満床なのか」と感じる患者さんがいることは理解できる。しかし、「誰が見ても空いてる空床があるのに本当は満床」ということはある。たとえば、入院患者さんが外泊しているときや、既に予約が入っているとき。新規に入院させたい患者さんが一泊入院で済むのであれば先約のあるベッドにでも入院はさせられるし、むしろそうしたほうが経営的に好ましい。だけど、退院の見込みがつかない患者さんを入院させてしまうと、今度は入院を予定していた患者さんに迷惑がかかる。

2008-11-14

「入院予定によるベッドの空きがないことを理由に受け入れを断るのはけしからん」との意見を御希望なら、現在本邦で化学療法を受けられているすべての悪性疾患患者に「私の意見のためにあなた方の疾患が再発する危険が増大し、治癒に至る可能性が少なくなりますがご了承下さい」と説明し全員の同意を得てからにして頂きたいものである。

予定入院が遅れることによるリスク - ちょっと呟いてみる

元々勘違いで「空いているのでは?」と思う人もいるだろうけれども、こういう話を知った上で、それでもなお「空いているのだから入院させろ」という人もいる。そういう人には人手がどうとかそんなことは知ったことではないのだ。自分が入院できるか否かが最重要。なぜなら、自分は今、切羽詰っており、予定は予定に過ぎないのだ。一番優先すべきなのは目の前の困っている人でしょ?そういう風にしか世界を解釈できない。単なる自分勝手であることもあれば、世界は善意で出来ていて、その善意は何よりも自分を助けてくれるはずだと思っている人もいる。理解できないとかそういう問題じゃない。最優先なのが「今そこにある自分の危機」なだけである。
優先順位を誰が決めるか、という問題はどういった話でも難しい。会社でも現場と経営の判断というのは違うしね。個人の権利が最大限優先されるべきだというのは正しいけれども…というとなんかの話みたいだな。
個人の権利を主張するのと最大限多数の幸福が上手くいくことの関係に横たわるのは思いやり(という言葉はいまいちなんだけど、適当な言葉が見つからない)なんだろうけれども。個人個人がみんなのために自分の何かを少しずつ犠牲に出来ればよいというところもあるんだけど、その犠牲の仕方は結構不公平なものであって…