2009年SIer業界、どうなる

僕の選ぶ2008年SIer3大ニュース。

さて、2009年ですが、かなり先行き不透明です。IT投資は企業にとって競争力を保つためにはやらないわけには行かないものですが、安く早くという要求はますます増えてくるでしょう。そんな中でも、お役所のうるさい官公庁とか銀行とか公共交通機関は多額の投資を強いられますが。
なんとなく、見えているところだけ、予想とか妄想。

金融業界

システム統合というつまらなく、かつ大変な仕事を終え、いよいよ新しいチャレンジを行うはずだった三菱東京UFJサブプライム問題の波で投資を抑えてきていますから、前半はあまり動きなしか。後半は景気底打ちを見て少し増やしてくると思いますが、銀行の予算なんて一年単位で決まる大枠があるからそれほどは伸びない。となると、今まで三菱東京UFJで仕事をしていた人たちがどこの仕事をやるかが結構なポイント。
みずほ銀行は統合後のシステムがそろそろ限界です。しかしこちらは巨額のサブプライムでの損害をもって動きが鈍くなっている模様。
三井住友はわからん。仕事の単価が安いことで敬遠されていたけれども、SIerも四の五の言ってられない状態ではありますから、多少動きがあるかな?
あとそろそろアレの更改とかアレの更改とかがあるからな。ICカードがらみでも多少動きがありますね。
保険業界は、不払い問題が発覚してからしばらくシステム対応が続いています。もちろん、金融危機の影響は如実に出ていますが、投資を減らせない状況か。
カード業界も再編の波が。セゾン-UC組も大変ですが、MUFGカードはどうなるんだろう。結構宙ぶらりんな感じだよねあれ。

流通・製造業界

厳しいんじゃね?IBMのリストラもこのあたりが中心らしいし。それ以上のことはわかりません。

SIベンダー

こういうときはやっぱり安さ爆発なベンダーが有利ではあります。官公庁の仕事を握っているところはやっぱり強いけれども、ハードウェアを持っている強みがなかなか生かせなくなってくる昨今。クラウドの名を借りてデータセンター方面に力を
入れてくるところが増えてくるんじゃないかなあ。
ニイウスが破綻して、ハードウェア卸売業みたいなのの先行きも暗め。なんとなく業界干され気味のIBMが今年どう動くかが注目されます。現場レベルでは危機感持っている人は結構いますが、特に長いプロジェクトでは老害が出まくっている模様。あと若いのが技術的に使い物にならん。

SIer

NTTデータは相変わらず。でもやっぱり仕事が少なくなっていて、内部の再編なんかは結構力を注いでいるようです。あと、標準化も頑張っている。でも、一緒に仕事をしている人の話を聞くととにかく責任ある立場の人がきちんとハンドリングできない現場が多くて大変みたい。紹介されて仕事の話を聞きに行くと、現場の人と部長クラスの人でまったく認識が違うことってのが沢山ある。報告上がってないのか聞いてないのか解釈する能力がないのか。
中小SIerは冬の時代。少ないパイを奪い合う状況ですから、旧来の関係に以下にしがみつくかがポイント、優れたものを持っていても新しく食い込んでいくにはそれなりのものが必要です。自社開発でなくてもパッケージを持っていないと話にならなくなってくるかな。
面倒な話ですが、出資があるとか、天下り的な話があるとかが受注に影響する面があります。特にこういう状況だと、出資先が業績不振になっても困るので。たとえば銀行なんかは本来そういう基準で決めちゃいかんのだけど、出来レースはあるでしょうなあ。そういえば、去年、かつて名前は似てたけどまったく関係のない某独立系大手評判の悪いSIerに某大手子会社系SIerから偉い人が降りてきたってのもそれ系かも。実際に政治力が働いた現場もありますし…。

ハードウェア

クラウドをキーワードに仮想化が進んで、またグリーンITだ何だで実ハードはスケールアップ、仮想化で分散化、という形態が増えてくるでしょう。銀行等の大きいところは自前でもてるし、そうでないところはクラウドを利用する。となると、あとはセキュリティーの問題意識だけかな。クラウドだからセキュリティーが低い、というのはないのですが、物理的に繋がっちゃっているものだけにバグだけは怖い。
IAサーバはいまんところ目立ったトピックがないですね。
今年はハード的な大きなトピックはなさそうな予感。

フレームワーク

Javaが確固たる地位を占める中で、IBMフレームワークは若干追い出され気味。コンセプトは悪くないんだけどねえ。
Strutsももう古いので次のスタンダードが見えてきて欲しいものです。
最近銀行の現場でもSpring+AOPとか言われてて、いまさらかよと思っていたりします。O/Rマッパーは業務処理が多いシステムではなかなか使い物になりませんね。SOASOAPだとか言っているけど、SOAPを単なる通信プロトコルと考えてコンセプト作っているとかもうね。で、サービス化が全然できてない。

セキュリティー

内部のシステムが増えてくるとID管理コストがバカにならないのでシングルサインオンの仕掛けはだいぶ伸びています。EC系サイトだとこれから会社間の連携とかもそれなりに増えてきそうですけれども、どっちかというと巨大社内システム間連携のほうが使い出がありますな。どうせ端末WindowsなんだからActive Directoryの認証と連携してやれば楽チンだし。
年末に明らかになったMD5を使ったサーバ証明書のクラックで一悶着あるかどうか。セキュリティーは形をやっておけばOKと考える会社って結構多いですからね。
この辺のソリューションをうまくパッケージングできればそれなりの仕事があるかも。

工事進行基準

大物プロジェクトが少なくなった今、せいぜい年またぎの部分でしか影響がないような気もしてきましたが、しばらくは混乱が続くと思われます。
現場の作業リソースを奪わないで欲しいんだけど、無理かなあ。タダでさえ管理工数なんかはディスカウントの対象になりやすいんだから、こういう負担が増えるとSIerは疲弊します。
まあ、正しいことなんだけどね。

明るい未来

見えないwww
IT業界ははっきり言って人余りです。人が余っていることを認めないと、現場は改善されない。余っている人を食わせる仕事を創出しようとしたらどうしても非効率になる。プチラッダイト運動です。まあ、労働者じゃなくて経営者がやっているんだけど。
ただ、人を減らして効率化したところで儲かるようになるかというとそれは別の話。単純にコストが下がるだけじゃあIT投資全体が安く済むってだけに終わってしまうわけで。商品としての情報システムに適正な値段がつけられないというのは業界の構造上の問題です。ディスカウントしようと思ったらどこまででも(限界点はあるにしろ、原価が製造業ほど決まってこないせいで)出来てしまうから。
SIerが顧客べったりの「システム構築」で食える時代はそろそろ終わり。せいぜいあと10年もてばいいほうでしょう。たぶん一部の業界を除いて5年が限度。「サービス」として何がしかを提供することができないと淘汰されていってしまうんじゃないかなあ。
このお寒い状態の中、現状維持に甘んじるだけでは生き残れなさそうです。もうITバブルはこないだろうし。