二級医師を成立させるためには

たとえば。

一級建築士国土交通大臣の免許を受け、一級建築士の名称を用いて設計工事監理等の業務を行うものである。(建築士法2条2項)
一級建築士は次のような複雑・高度な技術を要する建築物を含むすべての施設の設計および工事監理を行うことができる。(建築士法3条)。
〜中略〜
二級建築士都道府県知事の免許を受けて二級建築士の名称を用いて設計工事監理等の業務を行うものである(建築士法2条3項)。具体的には、一定規模以下の木造の建築物、および鉄筋コンクリート造などの建築物の設計、工事監理に従事する。
二級建築士が設計・工事監理のできる限度範囲は以下のとおりである(当然ながら一級建築士も行うことができる)。
〜中略〜
つまり、木造の住宅や、小規模な鉄筋コンクリート造などの建物(延べ面積300m²以内のもの)など(主に日常生活に最低限必要な建築物)の設計及び工事監理が可能である。

建築士 - Wikipedia

こんな風に分けることが可能であれば二級医師というのもできるかもしれない。何がどう分けられるかは医師ではない身ではさっぱりわからない。医科と歯科が分かれているのがそもそもそういうことなんじゃないかと思う。逆に言うと、歯科以外の科は医科でなければならない理由があるんじゃないかとも。
外科なんかは一部は柔道整復師にアウトソースされている…わけでもないか。でも接骨院は骨折と脱臼の「医行為」をできることとされている。
意外と二級医師がいるということになるのか、歴史的経緯でこうなっちゃっているのかはわからない。歯科を二級と読んだら怒られそうだけど、医科じゃないという区別としてね。
建築士なんかは大規模な建物は高度な技術と計算を必要としていて、小さい建物はある程度経験とカンで建ってしまう部分もあるだろうから、明確な基準で分けられるんだろうけど、人体に大きいも小さいもないからなあ。

ただ、実現するには解決すべき問題点がある。たとえば、2級医師が医療ミスをしたときの責任は誰がとるのか。「重症だったら1級医師に回せばいい」というのは安易に過ぎる。多数の軽症者の中に、一見しただけでは分からないような重症者が混じっているからである。見落としの責任を追及される立場には、それ相応の待遇が必要であろう。森永卓郎は「2級医師を大量に育成して年収300万円ほどで雇う」と主張するが、年収300万円で地雷原を歩く人がいるだろうか。いや、いるか。某大学病院の医員は、大学病院からもらう給料は年間300万円ぐらいだった。
よろしい。無職になるぐらいなら地雷原を歩く人もいるとしよう。ならば患者側から見ればどうだろうか。「とりあえず大量に育成された」2級医師に診てもらいたいと思うだろうか。患者側の大病院指向、専門医指向は以前から指摘されているところである。なんらかのアクセス制限とセットでなければ、2級医師制度はうまくいかない。医療の質も保証されない。要するに、2級医師制度でコストを削減しようとするなら、アクセスと医療の質が犠牲になりますよという話。

2009-01-03

結局最後のところ。でもあきらめるのは医療の質という一言で表されるようなものではないと思う。ここでいう医療の質ってのは、治療行為そのものの質ではないんだよね。
そもそもの話、ヤブ医者にかかってしまえば質もへったくれもない。ただ、今の日本の制度は平均値をあげるという面ではよいものだと思う。ヤブ医者だって医者は医者、くらいは信頼されている。
二級であれ、専門バカみたいなのを育成できれば、治療行為自体は熟練し、質は上がるかもしれない。問題は、診断とか経過観察で、常道を外れることがすなわち持てる知識を総動員して臨機応変に対応しなければならないことが多いのが医療というものだということ。虫歯とか単純な骨折がその状態に陥ることは少ないだろうけど。だから、治療の実行為にのみ熟達している二級医師がいたとして、別の症状の兆候とかを見て取れるかなんてのはちょっと期待しづらい。
重ねて言うけど、ヤブ医者にかかっても同じことだけど、平均的な医師なら見つけることが出来る、というのは平均値をあげることで確率的に解決するしかない話で、二級医師はその平均値を下げるという行為になりかねないってことね。
平均値を下げないためには二級医師の従事できる行為はかなり制限されなくてはならない。熟練工のような、人出を要するし、作業自体は単純だけれどもそれに熟達していないと従事させられないような存在として考えるのであれば、いてもいいような気がする。ただ、システム開発と同じと言ってしまえば失礼かもしれないけど、どんなにすばらしいコーダーがいても設計者が熟達していないとろくなシステムができないように、一級医師が熟達する機会を奪ってしまうと当初の目的が達成されない。
ともあれ、一つは作業従事者としての可能性はあるのかな、とは思いました。
単に普通の医師の代替として考えると、まあ、ヤブかもしれないけど医者は医者、と思って割り切れればいいけど、医師本人としても二級だからヤブみたいな感じで扱われたらストレスたまるだろうしね。
年収の問題は別よね。責任を一級医師が全部引き受けるとしても、年収300万で一定以上の頭脳と熟練した技術を必要とする職業…ああ、町工場の熟練工を考えたらそう不可能でもない?でも、医療って景気がよければその分儲かるって物でもないから300万のキャップをかぶせられちゃうと夢も希望もないよなあ。