派遣社員の給料の算数

以下がおかしいと突っ込んでいた自称算数の出来る人のエントリを見たのだが…

200人が正社員で100人が派遣、正社員の年収は400万円、派遣は200万円だとすると、賃金原資は200人×400万円+100人×200万円=10億円

http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/680f94098f884812ddf59d3c32a68a79

は過度に単純化されていると思うので、もう少し現実的に見てみる。と言ってもSIerしかわからんので自分ちを想定してやってみる。年収400万の社員だと、(会社負担分の)社会保険や交通費、フロアコスト、管理部門の工数等もろもろ換算して原価が大体700万くらい、派遣社員や協力会社要員は年収200万レベルだったら相手の会社に払うのは350万くらいかな。となると、賃金原資は200×700+100×350で17億5千万、これを全員正社員にすると250人雇えるので50人ほどは職を失います。あれ?計算結果は一緒だ。
純化していることで原資が少なくて見えてるだけで、実際には正社員も派遣社員も経営側のコストとしては大体こんなもんだから、池田先生の計算は感覚的には正しいような風にも見えるなあ。とはいえ、(まともな)SIerだと年収200万の協力会社や派遣社員なぞ猫の手のほうがマシだというのがわかっているので使いません。最安でも(1年まるまる雇ったら)600万くらいのコストはかかります。うちでは。でもって社員の換算費用もよっぽど若い人が集まってない限り、もっと高い。
そのかわり、SIerは毎月レベルで人が必要になったりいらなくなったりするのですよね。上記は協力会社としているけど、派遣でもあまり変わりません。派遣のほうがピンハネ率は高いかもしれんけど。
もちろん、月80万とか90万とか100万を超えるような人もいるんだけど、そういう人は逆に正社員化されることでもらえる給料は安くなる。というか、協力会社の単価が高い人がみんな自社から高い給料をもらっているわけではないよね。IT業界における派遣と正社員の一番の違いは、正社員は(出来る人にとっては)ピンハネ率が異常に高い代わりに仕事がなくても給料は保証される(もちろん、会社が潰れない限り)けれども、派遣はそうじゃないってことだな。働き方の形態も変わってくる(特に命令系統とか)けれども、それはここでは本題と外れるので書かない。
製造業などの派遣の問題は、正社員に比べて、ではなく、そもそも絶対的な給与水準が低すぎることにあると思うんだけど。極端に言うと、いわゆる世に言う「マグロ漁船」並みにどーんと稼いで、次の仕事を待つ間それで暮らす的な水準もらってないとやってられないはずなんだよね。それで景気のいいときには正社員より収入が良いし、景気の悪いときには悪い、均すとまあいい勝負、ってくらいでようやく「年を越せないのは自己責任」だよね。景気のいいときにようやくかつかつってのは派遣職種の緩和が「企業の」雇用調整弁として「しか」機能していないからだよなあ。