ニコニコ動画でアンケートした結果を持って調査と称するおかしみ

ギャグでやっているような気がしてきてしまいます。

権利者側は2008年12月に、ニワンゴの動画投稿サイト「ニコニコ動画」にあるアンケート機能「ニコ割アンケート」を用い、補償金制度に関する調査を実施。これによると、私的録音に用いる機器はパソコンが72.4%と多く、これを基に試算すると「11〜39歳の個人がパソコンに保有している楽曲は239 億曲を超える」(日本音楽著作権協会の菅原瑞夫常務理事)など、パソコンによる私的録音録画の実態が広がっているとする。

「20XX年モデルには乗らない、パソコンにも補償金を」 | 日経 xTECH(クロステック)

239億曲というのはにわかには信じがたいですね。総務省の統計によると、10〜29歳の人口が大体2700万くらい。つーことは、1人頭1000曲。アルバムに換算すると100〜150枚くらい?1枚2500円として、25万円×2700万=6兆円以上?私的録音のせいで売り上げが落ちたと仮定して、10年前と同じ売り上げが続いた場合との比較をしても大体1〜2兆円くらいしか差分がないので、239億曲の3分の2は少なくとも正規に購入されたものと考えてもよさそう。しかし、パソコンに保有すること自体は何にも悪くないだろうしねえ。
じゃあ、アンケートも見てみようか。
http://www.nicovideo.jp/static/enquete/n/20081219.html
選択肢が多くて長いのでそちらはリンク先で。
Q1. あなたは、保存用に音声や音楽をデジタル録音する際に、どのメディアを主に利用しますか。(音楽ファイルのダウンロードを録音に含みます)
なんだこりゃ。いきなり音楽ファイルのダウンロードを含みますと。区別はしない、使ったら全部音楽ファイルのダウンロードと同じ(しかもダウンロードって違法も合法も区別されない)。これはひどい
Q4. この1年間で、およそ何曲録音しましたか。(音楽ファイルのダウンロードを録音に含みます)
これもひどい。
Q14. 録音にパソコンを利用する方にお聞きします。最近1年間に録音した曲のなかで、有料でダウンロードしたのは何割程度ですか。
選択肢に「ダウンロードはしていない」がない。
Q16.パソコンで録音したり保存したりした音楽を、さらに下記の機器・媒体にコピーしますか。
iPodに入れるためにiTuneに入れたものは全部該当する。当たり前に使うのと、違法にダウンロードしたのをさらに入れるのとの区別がつかない。
次録画。
http://www.nicovideo.jp/static/enquete/n/20081220.html
Q1. あなたが主に利用するデジタル録画機器を教えてください。(映像ファイルのダウンロード保存を録画に含みます)
録画機器とは再生機器を含むのかどうか。携帯HDD式プレイヤーは録画機器ではないのか。いまいちわからない設問
Q4. 最近1年間、主にどのような映像コンテンツをデジタル録画しましたか。(映像ファイルのダウンロード保存を録画に含みます)
無料でダウンロードできるものに違法とそうでないものの区別がつけられる選択肢がない。
最後に補償金
http://www.nicovideo.jp/static/enquete/n/20081221.html
Q1. デジタル方式で行う私的録音録画には、著作者やアーティスト、レコード製作者等(以下「クリエータ等」)への補償金の支払が必要であることを知っていますか
設問が嘘八百

私的使用を目的として、「デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器であって政令で定めるもの」により、「当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるもの」に録音又は録画を行う場合(著作権法30条2項)

私的録音録画補償金制度 - Wikipedia

であり、たとえば今話題のブルーレイは対象ではない。
Q6. ヨーロッパでは、多くの国で携帯音楽プレーヤーや、データ用CD-R・DVD-Rなどが補償金の支払対象となっていることをご存知でしたか。
ヨーロッパではDRMと補償金、どっちがよいんだという論調が主流であり、どっちもとろうという流れではないようだが、そのあたりを説明しないと片手落ち。
Q7. 日本では補償金制度に反対しているメーカーが、ヨーロッパでこれら機器等を販売する際、補償金を支払っていることをご存じでしたか。
意味のない設問。単なる法律遵守。
Q8.こうした事実により、例えば、フランスでは国民一人あたりの年間の補償金負担額は400円ほどですが、日本では28円ほどです(2007年度)。国によってクリエータ等に還元される補償金の額に大きな違いがあることをご存じでしたか。
前段の前提が意味を成していないため、この設問にもたいした意味はない。
Q9. また、補償金制度のある国々では、日本以外すべて、法律上の補償金支払い義務者がメーカーや輸入業者であることをご存知でしたか。
だからなんだというんだwww
Q10. 著作権保護技術(コピーガード)は、コピーが簡単なデジタルの世界では、違法な利用を防止する重要な役割があると、クリエータ等は考えています。あなたは、コピーガードについてどのようにお考えですか。
考えているというクリエータ等が何者で内訳はなんなんだろうか。
Q13. MDではこの著作権保護技術が有効でしたが、パソコン上では事実上無効となり、デジタルによる私的録音がクリエータ等の想像をはるかに超える量になってしまったことが、現在の補償金制度を見直す動きの大きな要因であることをご存知でしたか。
存じ上げないのですが、本当にそうなのでしょうか。自分の買ったCDから携帯用のMDにコピーするのにもメディアに補償金がかかっているのに違和感があったくらいなのですが。

全部に突っ込んでいたらきりがないのですが、特にはじめのほうには違法と合法の区別がつかないような選択肢が並んでたりしてなんともばかばかしい。アンケートというのは選択肢にバイアスがかかっている時点で評価に値しないものです。

さて、何度も書いてきた話ですが、パソコンやHDDへの課金。いろいろと思うところはありますが、汎用機器に課金するのはあまりにも広げすぎ。自分の演奏を取ったりするMDの課金すら金返せと思ったものです。
HDDに課金するスキームでどうこう言っている暇があったら、デジタルメディア時代でもちゃんとコンテンツが売れる仕組みと価値あるコンテンツを生みだす活動をすればよいのに。

追記

こんな話も。

これを踏まえ、Culture First推進団体は、2008年12月に動画投稿サイト「ニコニコ動画」において、6万人規模のアンケート調査を実施。その結果も会見の中で紹介した。ニコニコ動画を選んだのは「そこのユーザーが私的な録音録画に一番密接であり、コアなユーザーなのではないかと考えた」(JASRAC菅原理事)からだという。

technorati.jp

コアなユーザーであることを認識しています。なので、

また、今回の調査結果と、総務省のパソコン利用率のデータなどから、年代別に所有するPCに保有されている楽曲数を推計。10代〜30代で、最低でも国内で239億曲が保有されているという結果が出たという。

technorati.jp

コアなユーザーが、たとえば他の人の10倍PCを活用して楽曲を保有していると仮定したら、最低でも、という数字は大きく下振れするわけですが。最低でも、というのはニコ動ユーザー以外の全員も同じ割合で保有していたら、ということだよね?ニコ動ユーザーがコアなユーザーだということを認識しているのになんでそうなるのか。検算していないから考慮しての結果かも知れんけど。