専門知と民衆の知的レベル

何がしか自分の考えなどを他者に発信したい場合には、ネットで偉そうなことを言っているところで自分の知的レベルの高さを証明していることにはまったくならないということは重々承知の上で、それでもある程度の高さを規定した上で発信する、ということがほとんどかと思います。まあ頭が良い悪いではなくて、知っているか知らないか、というレベルの話であることも多いと思うけれども、その知っていることが真実で、他人の知っていることは真実ではない、という風に考えることも、良い悪いの話にカテゴライズされてしまうかもしれません。

なんでまあ、こういう風な発言も出る罠。非医療者からの発信であれば尚更「医者でもないのに」的なことになりそうだし。もちろん、医療の現場では見くびっているどころか現実では吉村医院からの搬送患者で大変だったりするわけで、本気で「また一つ火種が」みたいに思っているのでしょうけど。
話題になる⇒肯定的に受け止められている⇒それがいいことだと勘違いする人が増える、というステップが現実的にあるのだから、見くびるどころか見下されても仕方が無い、というわけでもなく、知らないんだから仕方が無い⇒でも間違ったことを広めるのは勘弁、という程度の話で怒っているのでしょう。いやね、医療の現場に余裕があって、勘違いした人が多少増えたぐらいではなんとでもなる、という程度の状況なら良いのでしょうけれども、もう産科の現場はパンパンだと言われていますし、そんな中でごく少数でもそういう番組見て自宅出産を希望されたりすると困るわけですよね。

それ言ったらホメオパシーだってなんだってごく?少数の人が影響されているだけ、という見方もできようものだし、何についてもそうなんだろう。

というか、このような番組が存在する、ということ自体、見くびられるべき一般人の存在によるものではないのか、と思うと実に救いようの無い何かがここにはある。

そもそも問題は、知的レベルなんだろうか、という気がしてならないんだよね。騙されやすい、という意味では知的レベルは重要なんだけど、それ以前に知っているか知らないか、というほうが大きいと思うわけ。少なくとも、テレビだけが情報源だったときよりも今いろんなことを知っている(間違いもたくさん吸収している気がしなくも無いけど)。

もっというと、「我々の知的レベルを甘く見ないで欲しい(キリッ」って、同じ番組見て騙されている、知的レベルの低い人、というのを規定しているからこその発言だよね。医者が怒っているのは「間違った/誤解されやすい/等々の情報を伝えやがって」ということに対してであり、それは知的レベルがいかようであれ、知っているかどうかがもっとも重要な何かを考える/決めるときのファクターになり得るということがわかっているからでしょう。だから、「見くびっている」という発言って少なくとも自分は知的レベルが上であり、それで騙されちゃうような知的レベルの低い人は救いようが無いよね、と言っているのと同義である。言い過ぎか。視聴者全員「あー自宅出産なんかしちゃってバカだよね」と芸能人とテレビ局を嘲笑している、という光景を想像していることが無きにしも非ずか。無いか。

社会に蔓延る問題が問題のままであることを、頭の良し悪しの問題に還元して、警鐘を鳴らすことをどうでもいいと考える人は自らの知的レベル(嘲)の枷によって逃げられなくなったりするんじゃねーかなーと思う今日この頃です。