技術屋としてのSIerの値段

仮定の話です。
ある巨大システム開発会社に、ある巨大プロジェクトのため雇われているA社とB社。A社は規模も大きく、いろいろな理由があって単価が高い会社。大量に人を投入しています。B社は規模も小さく、プロジェクト内での勢力も少なく、吹けば飛んでしまう。
ところが、A社は何をやるにも、各方面にQ/Aを飛ばしまくる。もちろん、業務要件に関わるものだったらよいのですが、SEの根幹に関わる部分、例えば「こんなSQLでよいですか?」「DBでこんなこと出来ますか?」なんてことを平気で聞く。それでもその製品固有の知識が必要で、サポートベンダーもいる状況の部分はまあ勘弁できるけど。いや、マニュアルもっと読めよ、と思わなくも無いけど。実験する環境が無かったときはともかく、もう環境あるのに触りもしないでQ/Aかよ、とか。
んでもって、B社が小さいながらも技術屋集団で、今回使うプロダクトの上にFWを構築してみんなそれを使うことになっているからといって、Javaに対する基本的なことを俺らにQ/Aしてくるなよ!そんなサポート工数もらってないよ!…おっと、仮定の話でした。
おかげで、基盤チームがくだらないQ/Aに忙殺されて、本来(FWチームであるところのB社がやってもらいたいような)基盤チームがやるべき作業の工数がだいぶ持っていかれていたりする、という状況は、あまりよろしくありません。

いやそりゃね、守るべきものを守る、というのも大切ですが、A社の単価には、SIerとしての技術と信頼、というものが含まれているからこその単価なはずです。究極的には単価も関係ない。B社が「うちは安いから技術は保障しません」なんていうわけないし。じゃあ、A社の競争力って何?人脈?

SIerとして、SEとして、基本的に頭を使うべき部分をアウトソースして、俺たち業務の部分の作業だけやってりゃいいんだぜ、なんて言っているとそりゃあオフショアの人に開発が置き換わっても仕方が無いよね。大量に作業が出てくるのはシステムの性質上しかたがないけれども、それをいかに効率よく、美しく捌くか、そのやり方を考えるのが上流SEの仕事だし、技術者としての矜持としてもつべきものであります。

巨大なシステム開発での問題点の一つは、失敗したときのリスクを恐れすぎて(確かにこれは下手すると下請けが一発で潰れる可能性が無くはないので怖いのだけど)、クソくだらない、失敗しないためだけにあるような仕掛けの元にシステムを作ってしまうこと。効率化も何も無いんだが、それをもってシステム刷新と言ってしまう。それハードとパッケージと使ってる言語が変わっただけですから!
そういうのを助長するのが、リスクをとらない巨大SIerの存在かもしれないですね。某最大手SIerはそういう意味ではまだ全然マシで、新しいことを導入する力はある。受託開発中心で、人売り稼業をしているSIerでは、「俺たちは業務屋じゃなくて、業務もわかる技術屋だ!」という誇りを持って仕事をしていないと、いかに多くの人月を発注してもらうかだけが目的になってしまいます。そんな設計で作ると、下流は安い会社にどんどん置き換わっちゃうよね。作業ではなく、仕掛けの構築にプロとしての技術が必要なんです、という認識の下、人月ではなく単価で勝負できるようになりたいものですが、お客さんも含めて、平均単価が安いか高いかが会社の評価になりがちなんだよね。
トータル金額で見たら、絶対に損している、ということを適切に評価できないのであれば、そういう購買部署なんてシステム屋にとっては邪魔でしかないはずなんだけどね。