「自炊」業者とネットに出回ることの因果関係はあるか

こんなニュースが。

紙の本を裁断してスキャナーで読み取り、自前の電子書籍を作る「自炊」の代行業は、著作権法で認められている私的複製にあたらないとして、作家の東野圭吾さん、漫画家の弘兼憲史さんらが代行業者を相手取り、営業差し止めを求める訴訟を起こすことが、19日わかった。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20111219-OYT1T01337.htm

まあ、こういう事態に至るのは至極当然のことかと思う。さすがに濃いグレーゾーンだから業者も覚悟していてのことだと思うし、ある種の賭けでもある。この訴えが退けられれば先行者利益を得られるだけの投資になるかどうかは疑問だけど(安心してから大規模にサービス展開してくるやつらはいるだろうし)。

しかし、主張にはこうある。
「電子データがインターネット上に出回るなどして著作権を侵害される可能性が高い」
うん?それは業者の問題なのか?

あえて因果関係があると考えると、本来「自炊」に必要な機材、手間を考えると、ハードルが高くて行わなかった行為を助長する、というレベルの話かな。自炊して流すような奴はそもそも自分で環境を作っちゃうだろと思わなくもない。まあ、DRMの付与もないアンコントローラブルなコンテンツが業者の手で大量生産されるってのはなんだとは思う。
ただ、そこを論点(実際の訴状で争点としているかはともかく)にしてしまうのは因果関係の立証が難しいという点では筋が悪い気がするなあ。もっとダイレクトに「私的複製の範囲を超える」で終わってよいと思う。

つきつめてくと「タブレットPC(やスマホ)の存在が悪い」になっちゃうしね(言いすぎ)。

それよりも、ユーザーが自炊してまで電子化したいというニーズを出版社・権利者自身がビジネスチャンスとして捉えて、仕組みを構築する必要があるんじゃないのかなあ。もはや出版社も倒産してしまった絶版本とかではむずかしいかもしれないけどね。