作家にいかにして報いるか

僕達消費者にとって、作家(漫画家)は金儲けの権化ではなくて、コンテンツを生み出してくれる大切な存在です。決して敵ではない。訴えることを哂うのは簡単だけど、貶して何の特になるのだろうか。
この問題の解決のためには、いかに作家を味方につけるか、だと思う。金儲けの権化ではなくてもそれが職業として成り立っている以上、儲けさせる必要はある。

コンテンツの再利用という点では作家が一番不遇だ。映像の世界(ゲーム含む)は結構リメイクがお盛んで、それもどうかと思ったりもするけれども、同じコンテンツが新しいメディアが出るごとにやれコンプリート版だやれ高画質版だとリリースされて行ったりもする。
残念なことに活字メディアは画質が上がったことを理由に再度買い直してくれるような行為はない。漫画もまあそうだろう(たまに大判の愛蔵版が売れるが)。つまり、一度電子化されてしまって違法に出まわるようになったら終わりだ、ということである。

ここでもう一度自炊業者の是非を考えてみる。法律的な問題はさておき、自炊業者がいることが海賊版の存在を助長するのか。答えはNOだ。海賊版P2Pなどで無償で出回っているものを含めて)は自炊業者を経由する必要性はまったくないから。本来的には誰の権利も侵害していないからこそ、著作権の事項に頼って訴えるしかないし、動機が海賊版だ裁断されるのが悲しいだとわけのわからないものになる。少なくともあの作家たちの主張を見てこれがいけないことだって思う消費者がいるか?いないわけじゃなかったみたいだけど。

自炊代行は明らかに法的にはグレーゾーン(どちらかというと許容されるほうが強そうな気はするけど)だし、訴えるという行為自体が悪いとは思わない。言い分が頓珍漢なだけで。


僕は作家ではないから想像するしかないけれども、仮に作家になったとして、自炊代行業者が繁盛していると聞いて思うことは何か。「それなら電子書籍買ってよ…」かな?しかしちょっと待てと。自炊しているのは自分の作品のファンであるか、置き場に困った蔵書家か、手持ちを何でもかんでも電子化したい変わり者である。わざわざお金を出して電子化してくれるんだから、ファンの可能性は高い。それはとても嬉しいことだけど、哀しいかな収入に繋がらない。電子書籍だったら売上が上がる=発行部数が増えるということで、作家としての実績にもなるけど、一回買ってくれた人にもう一度買えとは言えないよね…
原本をもっていたら安く電子版を提供します、というのは物理の壁が高くて安価で提供できそうにはないし…困ったなあ。本当に必要なのは、こうまでして愛されている自分の作品がもっと他の人にも広まってくれることだよね。自尊心も懐も満たされる。


簡単にだけど、まじめにシステムを考えてみる。海賊版対策は電子透かし入れておけばいいだけの気がしてならない。作家に報いるシステムとしては、業者がスキャンした本の数をきちんとカウントすることで、ランキングを構築することが第一なんじゃないかと思う。むろん、それを管理することでロイヤリティーの支払いをすることも不可能じゃないけれども、故人や行方不明など自炊業者での追跡が難しいものもあるだろう。自炊ランキングは作家の人気のバロメーターにつながり、結果として新しい読者の存在を生む、のであれば理想的である。

ちょっと適当すぎるアイディアでしかないけれども、少なくとも消費者と作家が対立することはお互いにとって無意味なことだと思う。


もうちょっと考えてみよう。自炊代行でググッて最初に宣伝が出る業者は一冊150円、激安業者で80円、訴えられたのは1センチ200円。下手すりゃブックオフで買うより高い。それだけの金をかけてわざわざ自分で見るためだけに電子化をするわけだよ。それって作家側としてはどう思うんだろう。ブックオフで「買い取れませんが引き取れます」と言われて結果的に100円の棚に並ぶのとどっちがよいんだろう。少なくとも裁断された本がブックオフに行くとは思われないし…それとも、電子化が新たな価値を生み出しているのにそれが自分たちに全く寄与しないことに憤っている?だとしたらそれは甘えだよね(出版社含め)。作家を商売と捉えたら、この壮大なビジネスチャンスにおいてするべきことは業者を訴えることではない。むしろ生み出されている金をどうやって自分のもとに引き寄せるかを考えるべきだよ。自炊代行業者を潰して残るものって一体何だろう。若者の書籍離れではないかな…


僕は、本が大好きだ。電子書籍はちょっとどうかと思ってる。大きさ、重さ、感触、一覧性、何をとっても紙の書籍の優秀さは際立っている。ただ、ちょっとかさばるけれども。そういう人はたくさんいて、だから紙の本はなくならないと思っている。というか思いたい。でも、それが全てではないと思う。


だいぶタイトルと違うことを書いてしまったような気がする。もう一度言っておくと、作家は今の状況をきちんとビジネスチャンスとして捉えて欲しいと思う。自炊代行業者に払うお金があるってことは、それなりの仕組みの上でなら作家に報いる用意ができているということだと思う。手っ取り早いのは自炊代行業者を自分たちのビジネスの俎上に乗せてしまうことだ。それが無理でも、今の自炊代行業者を利用している消費者の思いにどのように報いるかを考えて行動する、それがお互いの関係を良くしていき、結果として自分たちの報酬につなげていける。

もはや、コンテンツ商売って消費者とのインタラクションなしには成り立たなくなっている側面がある。もちろん、偉大な作品においてはそういったものを超越していたりはするけれど。作家たちはもっとビジネスに貪欲になるべきだ。ビジネスをまじめに考えたら、如何に消費者から搾取するかではなく、如何に消費者にサービスするかが大事だってことがわかるだろう。

そして、我々消費者も自分の大切な作家たちにもっと報いることを考えていきたい。簡単なことじゃないけれども、ここを乗り越えて行かないと、世界は変わらないね。具体論がなくて申し訳ないけど。