著作権は権利を守る。商売は守られない

興味深い調査結果が出たようです。

仏スリーストライク法の影響に関する新たな報告書によると、昨年、フランスのインターネット海賊行為は半分に減少したのだという。世界中のロビイストたちがこの結果をネタに政治家にアピールしようと準備を進めているところだろう。しかし、この報告書には触れられていない事柄がある。確かに海賊行為は減少した、しかし、合法的な購入チャネルからの収益も減少したのだ。これまで海賊行為こそ収益減少の主因であると主張されてきたというのに、不思議なこともあるものだ。

仏スリーストライク法、著作権侵害を激減させるも売上は上がらず - スポンサー広告ネットと著作権 スリーストライク

図らずも、ダウンロード違法化に反対する勢力が主張する通りの結果になってしまっている。もっとも、購入チャネル(と内容)の電子化によって単価が下がっている影響もあるから単純にダウンローダー大勝利!って話ではないのは記事にあるとおり。
でもコンテンツ業界はインターネットの登場による関心ごとの多様化の影響を確実に受けているよね。敵は違法ダウンロードしてまで従来のコンテンツを欲しいと思う層ではなくて、従来のコンテンツから関心が離れてしまっている人を惹きつけている新しいコンテンツ、つまり競争相手だ。
著作権自体は、コンテンツに対する権利を保護する。でも、それが売れることを保証する市場の仕組みではもちろんない。一見、従来の市場が未来にわたって同様の枠を持ち続ける前提が正しくて、それが海賊版の存在により脅かされているという構図があるように見える。たしかにその構図においては著作権が正しく市場から吸い上げるべき金の消失を防ぐ機能を果たすんだけど、現実的には市場は一定の規模、成長率を保証されているものではない。
そこは著作権そのものの問題ではないけど、著作権を厳密に考えることがコンテンツの売り方の多様性を狭めているのではないかという危惧がもっと業界内からでてこないと、市場はどんどん先細るのではないだろうか。