ソーシャルゲームはコンプガチャの夢をみるか(その3)

最後の項として、ブラ三の収益構造の問題点について書いてみます。

前回までで示したとおり、ブラ三は様々な課金ポイントがあり、カード以外の額はそれほど高くありません。そして、重要なのは「完全無課金でも普通に楽しめる」というところ。これによって、課金はより有利にゲームを進めるための手段であり、それ以上の何ものでもないということができます。
その有利さは額と使える時間次第ですが、感覚的にプレイヤーとしての強さに換算して1.5〜5倍くらいですね。5倍も強いのではどうしようもないと思われますが、ブラ三は基本的に集団を作って遊ぶので、数が力になります。なので、課金者にとって有能な無課金者は大事な手駒、無課金者にとっては課金者は心強い味方になります。他に大事なのはソーシャルゲームならではの外交や戦略戦術ブレーンです。つまり、課金するということは、ゲームにスパイスを与えはするものの、根本的なゲームシステムを変えるものではないということです。

ただし、カードのシステムだけは、お金を使うようにできています。ここが、収益構造の要であり、コンプガチャと同様の構造と見られてしまうと一気にブラ三の収益構造を崩してしまうネックでもあります。では、問題があるのかどうか。

まず、絵合わせの要素ですが、これはほぼないといってよいです。ほぼというのは一応特定の組み合わせを集めると景品がもらえるのですが、その景品はゲームの中で他の手段でももらえるもので、希少性はまあまあありますが、限定的な何かを約束されたものではありません。
仮に、これが規制されたところで根本的にはなんの変化もない(おまけが減る)だけなので、特に問題なし。
では、ガチャ(ブショーダス)はどうか。有料ガチャのレアカード当選率(レアにはUR・SR・Rとありますが、ここではSR以上をレアとします)は1%くらいとみられています。つまり600円×100=6万円毎に大体一枚です。枚数管理ではないと言われておりますので、6万ででないこともあれば複数出ることもあります。出たところで何種類もありますから、ゲーム内で有益とは限らない。基本的にいいのが出たらラッキー程度のものです。
そんなのに沢山お金を費やすか、というと常識的に考えてNOですよね。しかしならがら、ゲームで俺TUEEEをしたいお金持ちは平気で費やすわけです。これはドワンゴが社内でみんなブラ三にはまっていた時の話を見れば明らか。ここに詳しいかわんご回顧録 ドワクエ戦記その1 - はてなポイント3万を使い切るまで死なない日記

ということで、カード以外の課金額はたかが知れているので、カードに如何にお金を使わせるかが肝であることがわかります。

そこに「射幸性・換金性」があると問題ということですね。

ブラ三のカードは、ゲーム内でトレードできます。トレードには原資が必要です。そのためのポイントは基本的にはゲーム内の行動で得られますが、それだけやっていてもすこしずつしか増えません。なので、お目当てのカードを購入するためにはポイントを何とかして増やす必要があります。その手段は、やはり手持ちの不要なカードを売るしかありません。運良く無料のブショーダスでいいカードを引ければいいですが、そうじゃなければ有料の武将出すで引いたお目当てじゃないレアカードを売ってポイントに変えてお目当てを買う、ということになります。

プレイヤー間の取り引きが絡むと必然的にですが、RMTが出来てしまいます。現にヤフオクを見ると…

http://auctions.search.yahoo.co.jp/search?p=%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%82%B6%E4%B8%89%E5%9B%BD%E5%BF%97+TP&tab_ex=commerce&ei=UTF-8&rs=2&slider=0

こんなものですね。ただ、射幸性があるかというと、ちょっと疑問はあります。ヤフオクを見る限り、大体1TPあたり0.3〜2円くらいが相場になっていますが、前述のとおりの確率でラッキーにも一番レアなURを引くと考えます。まあよっぽど運が良ければ1万くらいあればURが引けますが6万かかったとします。引けたURは5000〜20000TPくらいになります。2万TPだとして、相場がいいサーバーでも2円とすると売って4万。ところが、実際にはトレードでは手数料がかかりますから、20000TPってのは16000TPの価値くらいしかないので3万強。つまり、差し引きでプラスに成ることはほぼありません。

つまり、俺TUEEEしたい人が、割にあわないことをわかってなお突っ込む、というのがブラ三のカードの構造ですね。
これは、大人だったら別にいいんじゃね?という世界ではあります。もっとも、収益構造としては脆弱なので、あの手この手で煽ることが必要で、そこが問題だ、と言われるとどうかな…

カードの単価を下げるというのもひとつ解決策だと思うのですが、それをやってしまうとレアカードの価値が下がることで沢山お金を使う人とそうでない人との差が縮まってしまうので、お金を使うモチベーションが落ちます。なので、たくさんお金を使ってくれる層が、ここまでだったらなんとか、というギリギリのラインで値段を設定するのがいいわけです。

と、ここまで触れていないもう一個の問題。このようにレアカードをゲットしてそれをゲームで使用することが課金者としてのアイデンティティーなんですが、このカード、どのくらいの確率でレアが出るかは明示されていません。なので、運営が恣意的に確率をいじってしまうことが否定出来ない。もちろん、イベント等で排出率アップ!とかはやるんですが、そういうのじゃなくて、「何枚以上レア引いたらそいつにはしばらく不利な確率テーブルを当てる」なんてことができちゃうんですよね。これって長い目で見ると(上方修正も加えることになっていれば)元々の排出率に収束したりするかもしれないけど、収益の安定性を理由にそういう操作をしてしまうとちょっと問題です。

なので、そういった部分については明確に表示する義務とかができる可能性はありますね。

ソーシャルゲームのこういった構造は、既存のゲームに比べて沢山のお金を使わせるようにできています。でも、サービス終了したら全部水の泡ですよ?というあたりがその高額性に見合っているかどうかというのもこれから問われるんじゃないかと思っています。

(一旦この項終わり)