武雄市長への誤解と武雄市長の誤解

武雄市長は誤解されているだけだ。日本のためにがんばってほしい。
ここに書かれている素晴らしい取り組みと思われる事例については別にいいんじゃね?と思うよ。
それをイノベーションというかというのには異論があろうが、現実的に何か地方自治体にとってプラスになっていることをしているという事実について文句を言っている人はいないんじゃないかな。
もちろん武雄市長の発言自体には色々な問題があり、そのような問題のある発言を行う人格がやること自体を否定しまう向きもあるだろう。どこか別の九州の自治体市長と違って、人としてどうなの、レベルの人格ではないとは思うんだけどね。

だからこそ、武雄市長は今責められなければならないポジションに居る。

ITを活用するその発想や手腕は(それが正しく有効だったかの評価には時間がかかるだろうけど)、従前の自治体首長にはないものであることは認められる。多分、夢のある構想やそれを現実にする力があるのだろう。
(まあ僕としては行政の重大な施策が外国の一企業の、こちらでコントロールできることが保証されていないサービスに乗っかるという事自体はキモチワルイし、リスクが大きいとしか思えないけどね。)
しかしながら、これらには、一般にITサービスを実現するために考える前提の幾つかが抜けており、その最も重大で問題な点がプライバシーとセキュリティーの軽視である。一般企業であれば「オタクのコンプライアンスはどうなっているんだ!」と言われ、下手すりゃ監督省庁からきついご指導があるレベル。
ただ、サービスを発想する側がそこに無頓着であること自体はそれほど問題ではない。そういう枠に初めから囚われていたらろくな物ができないからね。だからといって、実現しようとするときにそれを無視することはできない。
ではなぜ、武雄市長の構想がそのまま重大な問題をすっ飛ばして実現に向かうのか。それはきっと一流の企業であれば無視できないセキュリティーガイドラインやその他のチェックがないから、あるいは武雄市長がそれを無視する指示をしているか、であろう。

武雄市長が誤解しているのは、みんなが言っていることがイノベーションを潰そう、ではないこと。世の中一般で当たり前に存在していて、今やろうとしていることを大きく阻害しなくても実現できるセキュリティーレベルを守ることを無視しようとしていることが非難されているんだよね。
だから、高木先生には腹立つかもしれないけど、専門家の意見として耳を傾けて欲しい。行政の長なんてのは自分自身が正しいことを証明するのは仕事ではないんだし、実際に武雄市長がやろうとしていることが、きちんとしたセキュリティーやプライバシーの問題をクリアしたものであれば、あるいは行政としてのリスクについてきちんと対処できているものであれば、素晴らしいんじゃないの?

武雄市が真に地方自治体のイノベーションの象徴になれるかどうかの重責が市長にはかかっているんですよ。だからこそ、きつい諫言に耳を傾けて欲しい。