日本企業を襲うITシステムクライシスはすぐそこ

システム更改案件というのに立て続けに携わっています。たいていはホスト系からオープン系への変更を伴います。そりゃ今更AIM DB-COBOLとか、ADABUS-NATURALとか使いたくないですしね。
ところで、日本はコンピュータの活用はかなり早かった方だと思います。その結果、企業システムの電算化はかなり早い段階でいったん完了しています。ITでできる事が増えてきた事によって色々と追加されているし、それが業務と直結しているところ(たとえば生産とか流通の現場)においては新しいものの導入も進みますがたいていの、企業における電算化の対象は、事務作業の肩代わりの部分です。金融はその親玉みたいなもので、ぶっちゃけシステムがないと実現できない事なんてなに一つありません(もちろん、現実時間でできるできないがあります)。まあATMとかインターネットバンキングみたいな行員が手を触れないで取引をする、みたいなものは例外として。
さて、そんなわけで再構築するシステムも、既存の事務がうまく回れば良い、ということで現行システムとおんなじにして!あ、でも紙の帳票は電子化したいなーというレベルの案件になったりします。ところがですよ、現行システムには要件定義書も基本設計書もなーんもないことがありますね。しかも、業務を知ってるはずの保守チームは今どこで何がどう動いているかを知っているだけで、何故何なんて一切知らなかったりします。ユーザー部門は「あんだけ苦労して要件定義して作ったんだから今更わかんないとかありえないよねー」という始末。どいつもこいつも現状なんかしったこたっちゃない。保守期限で仕方なく再構築しているのでこれを気に業務の効率化を図ろうなんて気がさらさらありません。
思うに、今後このような案件がどっと増えて行き、企業も技術者も疲弊して行くのではないか。これは、新システムによりドラスティックに業務変革が出来るとは考えないし仮にわかっててもしたくない、ということに原因の一端があります。そりゃ自分たちの業務が変わるのはめんどくさいし、効率化されたら人が減らされちゃうかもって思いますよね。企業のトップから見たら、人は減らしたいはずですが。
かくして、理解の薄い保守メンバー、業務を守りたいユーザー部門、効率化をしたいトップのバミューダトライアングルに囚われたSIerの運命や如何に!待て次号(初版の事情につき廃刊

と、そういうことになりますね。

やー、まじで情報化とは事務の電算化だとしか考えてなくて、その事務が担っている業務そのものを含めて会社の業務のあり方を考えましょうってことにならないんですよねー。なぜだろう。まあ現代の消極的ラッダイト運動にみたいなものかもしれませんね。

つまんないんですよ、そういう仕事って。

とはいえ、この手の案件がそろそろピークを迎えるんじゃないでしょうか。年配のホスト技術者が有終の美を飾るべく現行システムの要件再定義に駆り出される需要も多く見受けられます。もっともCOBOLのソース解析なんてバカでもできるので、アセンブラ出来たり基盤がわかったりしないと単価が見合わないですけどね!

こういうシステムが、馬鹿正直に現行通りに再構築されてしまうところからにほんのITシステムクライシス(の第3幕くらい?)がスタートします。更改のためだけにバカみたいな金をかけて、10年使わないとペイしないようなシステムが出来てしまう。運用コストも減らなければ業務の効率化もできない。これは投資ではなく負債です。
日本の企業におけるITシステム部門の地位は低いことが多いです。しかし、企業の未来を背負うのはユーザー部門ではなく、経営企画部門であり、そのビジョンを現実的な形に変えていくITシステム部門なんですよ。この企業内ヒエラルキーが変わらない企業は無駄金を投入する再構築案件のために企業体力を奪われ死亡します。いちはやい電算化の導入が今になって企業の足を引っ張っているという事実を正しく認識し、部署間の利害関係をこえて一丸となった改革を目指さないと、大企業のはしくれみたいな会社から順に死滅していくと思いますよ?

そういう未来を見ながら仕事をするのってしんどいですね。