ヱヴァQ考察(ネタバレ)キャラクター編

本作は新キャラが結構登場しているにもかかわらず、旧作からの登場人物を含め、ほとんど内面が描かれず、事態だけが進行しているという特徴があります。視聴者置いてきぼりの原因のひとつはそこです。
とはいえ、断片的に見えてくるものもあるので少し掘り下げてみます。(以下ネタバレ)


Willeの面々

どうやら、世界の真実(あるいは事実か)についての知識は全員にありそう。少なくとも、初号機を回収したり換装したりするのに必要な知識、サードインパクトの原因、「Adamsの器」あたりの知識は共有してそうです。Willeは途中のセリフから、加持が水面下で所属してきた組織と推察されるため、元々Seele、NERVの目的について知っていた可能性があります。

リツコ

シリーズを通して、どちらかというと真実を知っている側として書かれてきたリツコがWille側にいるというのは意味深です。TV版から旧劇場版にかけて、最後は裏切られるとはいえ一貫してゲンドウの側に立っていた彼女が何故ここでは反対側にいるのか。しかし、本作ではすべてを知るものとしての役どころも与えられず、その目的については現時点ではわかりません。

ミサト

ミサトさんのシンジに対する態度はおかしい。なぜなら、破においてシンジの選択を後押ししたのはミサトさんであり、であるならば、全て(実際にどこまでかは語られないけれども)をシンジの責任として周りが扱っていることについて割り切れる人間ではない。割り切っていればあの時ボタンを押すこともできたはずです。益々思い切りの良くなっているその他の行動に対比すると、これは単なる彼女の弱さを示しているのではないと思われます。
仮に、我々の知る破→Qという時間軸がまやかしだとしたら、このミサトさんの態度に鍵があると思われます。

アスカ

アスカの口からはほぼほぼ「シンジ」という人名しか出て来ません。まあ「コネメガネ」も人名と呼ぶべきか?シンジに対する態度は酷いものですが、宇宙からの回収の際の呼びかけ、ヴンダー船内での態度、「私は助けてくれないんだ」等を見る限り、愛憎半ばするという微妙な状態にあります。
Adamsの器」「綾波タイプの初期型」「リリンには到達できない」等のセリフを考えると、この世界についてある程度確定的な知識を持っているようです。というか、謎の言葉を吐く役どころとしては旧リツコのような立ち位置にありますよね。アスカの出自を考えると、元々ある程度のインプットがあった可能性もありますが…
左目の眼帯については、旧劇場版で量産型によってロンギヌスの槍で貫かれた弐号機の左目(アスカもその後ずっと押さえていた)との関連が疑われます。旧劇場版のラスト、なぜか手当がされているアスカの左目。最初の戦闘で攻撃を受けている際にも右目の傷が強調されていました。
しかし、これはミスリードの可能性もあります。旧劇場版で発動した人類補完計画?がシンジのせいかというとそうは見えない。単に続きであれば、大半の登場人物は死亡しているし、途中からだとしたらアスカはああいう形でやられていたか疑問です。
最後の1節から考えると、「エヴァの呪縛」が使徒化なのかどうか。単にそういうことではなさそうですけれどもね。(第一、数が合わない)
なんにせよ、物語の鍵を握っているうちの一人でしょう。

マリ

おそらく何らかの意図でNERFに送り込まれたであろうマリについては前作でも結局その立ち位置は明かされませんでした。ただ、NERV戦闘メンバーの面々よりも多くを知っている存在として書かれていました。今回、Willeの登場により、元々そこの所属出会ったことが想定されますが、これもよくわからない。アスカいわく「コネ」メガネということは、そのコネが明らかになっている=Willeの面々は正体を知っているということになりますが、それを視聴者に説明しないことに意味があるのか。どうにも立ち位置が未だにはっきりしない役回りで、単なる狂言回しでしかないのかもしれません。

NERVの面々

NERVは組織としては瓦解しているように見えますが、動力がなぜあるのか疑問です。

ゲンドウ

計画通りすぎてわけわかりません。旧NERFクルーの反乱についても計画通りなんだろうか。情報少なすぎてわけわからず。「リリンの王」として君臨できる何かがあったのかどうか。

冬月

TV版の「NERV誕生」を背景にすると、冬月は目的のために信念を曲げた男です。すなわち、NERVに留まっているのは、ゲンドウに付き合うというような単純な理由ではありえない。そこにははっきりとした目的があり、だからそれを助けるためにシンジとコミュニケーションを取ろうとするのでしょう。しかし、新劇場版としての背景は書かれたことがないため、人物像として一致しているのかどうか。本作で唯一大人としての(子供に接するような)態度を見せている彼ですが、結局事実をつきつけるだけでよけいに混乱を招いているのはエヴァの登場人物としては典型的ではあります。

レイ

綾波タイプの初期型」が何を意味するのか。9号機と交戦しているだけではわからない見た目があるのか。あるいは、感情のなさがそれを意味しているのか。いずれにしても、破のレイとは違うものとして描かれています。
ほとんど内面には触れられていませんが、TV版のリフレインであるならば、「3人め」が持ち得た魂はまだどこかに存在するのではないか。最後に目を留めたSDATが鍵になるのかどうか。

カオル

エヴァ最大の騙され役であるカオルは本作も健在です!
彼も一貫してSeeleの側として描かれていますが、Seeleの目的が未だにはっきりしないなかで、カオルが何をしようとしているのか。また、それが「碇シンジを助ける」というカオルの(少なくともセリフ上の)目的と合致しているのか。それがわからない。
この世界のループ性を担う存在であるのは間違いなく、しかし、彼自身の行為によってループをさせる立ち位置ではない以上、カオルもまた運命を仕組まれているといって良いのでしょう。
「カシウスの槍」は破の最後でMark.6により初号機に突きたれられたものでしょうけれども、ロンギヌスが2本あったりするイレギュラー事態に理由はわかっても適応できないというのが謎です。
シンジとのコミュニケーションについてはどうにもこうにも。尺は長いものの、TV版と大きく変わりはないんじゃないかなー。

シンジ

説明不足の演出のために元のヘタレに戻ってしまったとしたら気の毒ですが、破で見せた成長が御破算になっていることが破の続きではないとする一つの根拠ではあります。
一貫して主人公として扱われてはいますが、視聴者が感情移入できない形で描かれているといるのが本作の特徴でしょう。少なくとも、序、破とは違いますよ、というアピールとして。
とはいえ、サルベージされた当初、エヴァに乗るという自らのアイデンティティとも言える行動を強く求め、それを完全に否定されたことでアイデンティティを失うというプロセスがシンジを元のシンジに戻してしまった、ということも考えられます。
しかし、多分に物語的な都合でもあるように思えます。破の最後のシンジでは、あのNERVでのぼっちに耐えられないのではないか。
シンジが「説明を受けない」ことが物語のキーなのかも知れません。少なくとも、NERVと目的が同一ではない勢力であるカオルからしか、事件の説明を受けないというあたりが。

Seele

あのモノリスが存在そのものだったんだwwww
全滅したようにも見えますが、最後のバトルで9号機がヴンターを侵食している際のSeeleロゴからすると、個としての消滅はしたものの、集合意識として残っているとかそういう状態なのでしょうか。レイとSeeleとNERVの関係も単純では無さそうです。