泣き虫弱虫諸葛孔明 第参部/酒見賢一

ここ最近読書量が減っていたんですが、最新刊が出ていたことを今更ながら発見しましたw

泣き虫弱虫諸葛孔明〈第3部〉

泣き虫弱虫諸葛孔明〈第3部〉

知らない方のために説明しておくと、第一回新潮ファンタジーノベル大賞受賞者にして中国の歴史を舞台にした小説の名手、酒見賢一氏の問題作の続刊です。まあタイトルからして問題作なんだけど…

ここまでの2巻については以下。
泣き虫弱虫諸葛孔明 / 酒見賢一 - novtan別館
泣き虫弱虫 諸葛孔明 第弐部 /酒見賢一 - novtan別館

さて、第参部です。赤壁です。レッドクリフです。美周郎ですよ!広島ヤクザの呉軍団に花咲く男が惚れる男、周瑜公瑾、堂々の登場です。しかし、男惚れなら劉備も負けちゃいねーぜ…混迷が予想されますね。

冒頭、三国志エッセイwwww

壱部のときからそうですけど、作者、知らないわけがない三国志の世界を知らないふりしてブームをさも不思議そうな目線で客観的に書いているところがまず面白いんですが…

東京のどこかにはきっと『三国志』喫茶があって、コスプレ武将が
「主公(との)、御意でございます」
と、接客してくれるに違いない。片手に蛇矛とか青龍偃月刀を持っているので、お盆を運ぶのも技術的にたいへんそうだ。

ちょw妄想が過ぎますよww

でもありそうだな…三国志喫茶…
とにかく、作者の妄想によると日本は三国志に支配されている模様。

あと中国中央電視台政策の完全映像版『三国志』のレビューww見たくなったww

挙句の果てに、神聖モテモテ王国からの引用までしやがったこいつ…

とまあ、冒頭に三国志の恐ろしさを語り尽くした後はいよいよ赤壁なわけです…もうお腹いっぱいだよ…

既刊に比べると、出来事が多いし、原典に孔明の出番がたくさんあるせいでちょっと妄想パートが足りない。足りなさすぎる。西澤保彦の酔っぱらい推理にも負けない頭のおかしい妄想によって生み出された孔明の奇行が足らないんじゃー!!!

一応、三国志と言えば赤壁というくらいの盛り上がりパートですからね…でも、史実の赤壁の戦いは何があったかよくわからないと水を差すのを忘れない作者w

ええと、この小説、主にサブカル方面からの引用が多すぎてそっちに素養がないとワロエナイので注意ね。例えば長坂橋の戦いから生還した劉備軍団の一幕。

この宴会は孫呉切れ者策士、魯粛の歓迎会も兼ねていた。魯粛は酒席が豪快な男であり、酒も強いのであるが、精神的肉体的な疲れがどっと出て泥酔してしまった
「アトサキ、勝ち負け、ぜんぶ運じゃ。すべては運なんじゃ。劉よぉ、お前の強運をおれにくれやぁ」
と酔乱した魯粛が軍師にあるまじきことを喚いて劉備にからんでいた。
「ふっ、子敬どの、背中が煤けておりますぞ。わしのウンでいいのなら、いくらでも付けて差し上げる」
劉備は言って、裾をまくって本当に差し上げようとした。

おいwwりゅう違いだww

さて、死ぬほど怖い孫呉ヤクザ。いやね、孫呉って豪族連合みたいな面があって、これがまたヤクザの組の構図とよく対比できてて面白いわけですよ。
死んだ兄から組を受け継いだけど、下の抑えがいまいち聞かない孫権、後見人として隠然たる実力を誇る、死ぬほど怖い張昭のオジキ。徹底抗戦を主張する組…じゃなかった軍の重鎮たち…
そんな中、標準語でしゃべる美周郎の発するその男惚れオーラ…

仁義無き戦いがそこに…

一目見て孔明の危険性(というか何をしでかすかわからない変態性)を見抜き、殺意を抱く周瑜とのらりくらりとそれを躱す孔明の化かしあい。

いや、ヤクザの抗争みてるだけで面白いんだけど。

ヤクザを手玉に取る孔明、というのが話の中心になっちゃったもんでやっぱりちょっと妄想パワーと劉備軍団のハチャメチャな行動が少なくて物足りないんですが(既刊はどんだけだったんだよ)、やっぱり抜群に面白いのでした。

あ、まじめに三国志好きな人(特にXX様ラブ!な人)は「作者殺す」って思うので読まないほうが良いと思いますよ!

既刊は文庫版出てます。

泣き虫弱虫諸葛孔明〈第1部〉 (文春文庫)

泣き虫弱虫諸葛孔明〈第1部〉 (文春文庫)

泣き虫弱虫諸葛孔明〈第2部〉 (文春文庫)

泣き虫弱虫諸葛孔明〈第2部〉 (文春文庫)