ピンハネする事情、ピンハネされる事情

なんだかブコメに関心とか納得のコメントが多かったので反論ではないがちょっと違った目線から見ておこうと思う。

ここで、ピンハネについて定義しておくと、「自分は稼働せずに、他の人に働いてもらってその上前をはねる事」と定義しよう。

ピンハネの世界 - メソッド屋の日記

まず、この「稼働せずに」というのには「現場で」という暗黙の言葉がついているということを了解しておくべき。こういう場合は、例えばエンジニアが直接契約できない会社(色々理由はありますが相手が大会社ほどそうなる)なんだけど、そのエンジニアがご指名で仕方ないので契約できる会社の派遣社員(これが派遣じゃなくて二次受けだと厳密には違法)にして送り込む、いわゆる「口座貸し」はピンハネ分はリスク込の管理コストだし、仕事を丸投げにする系であればそこには営業コストも含まれている。
上前をはねるというのもあとそこにどれだけ利益を設定するかであって、口座貸しの場合は信頼が置ける相手ならリスク分程度しか利益を設定しない場合もままある。

ピンハネをする側の価値は「会社のカンバン」だとか「仕事をもってくる」事だけなのだ。時には契約上自分が取ってきてもピンハネされる事もある。

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ここが重要なんだけど、(契約次第ではあるが)会社の看板を掲げることは、何かがあったときのリスクを引き受けるということだ(近年日本IBMSIer二次受けに嫌われているのは、このリスクを全く引き受けない契約を迫るくせにピンハネ率が高いからだ)。大手の会社が個人と直接取引をしないというのもこういう部分に理由がある。信用情報がある程度しっかりしている会社以外に発注するということはリスクが高いわけ。

ある時から、このピンハネの負のループにいるのが嫌で、自分で直接契約するようにしてみた。すると、びっくりした。お客さんは、自分に対して「これだけやってもらってるのに、あの値段やったら本当に安い!」って凄く喜んでもらえた。

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これは当然で、本来は客自身が取るべきリスク(人の評価を含め)を丸投げにするのが「高い会社に発注する」という行為なのである。客側がリスクを引き受けたら見た目上のお金が安くなるのは当然だし、もし問題が起きたら担当者も引き受けた側も致命傷になる可能性すらある。もっとも、そんなに損失が出るような案件であればよっぽど信頼の置ける相手以外にはこういったことはしないだろう。

ビジネスになって交渉になると、「使われる側」にいる限り、Win-Winの状態になれなかった。その人がいい人とか、悪い人とか、ビジネスだから関係ない話なのだ。

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これはその通り、ベンダーの交渉相手なんて現場のPMがどんなにいいよっていっても会社のスタンダードを盾にとって首を縦に振らない。ただ、ここでいうWinって金の話だよね。本当のWinは関係の継続じゃないかと思うんだけどな。

もちろん、営業してもらって案件紹介したもらったので、お金を払うとか、口座を貸してもらったからお金を払うというのは、ピンハネとは異なる。それはバリューを出して頂いたので、その対価を支払っているだけだ。

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最初に書いたとおり、これが重要。ここでいう純粋な意味でのピンハネってのはあんまりないんじゃないか(なのであえてこれらもピンハネとする前提でこれは書いている。多分バリューとピンハネ額が見合ってないという意味合いもあるのだろうから)。

どうもこの話がピンと来ないのは現場で「ガンガン」働く、ということに対する価値の置き方なんじゃないか。ガンガン働いているのにピンハネされている、という気分になるということは、そもそも仕事と単価が見合ってないのではないか。「直接契約したら自分から見て高く、相手から見て安くなる」というのは前述の理由で当然なんだけど、それで満足なのであれば、単に営業費用やリスクヘッジ分の金が無くなっただけにすぎない。契約が変わったから単価が変わったってだけね。ガンガン働いたらそれに見合った金額にその後伸びていくのかな?そうじゃなくて、客にも予算があって、その予算の範囲内で費用が最適化されているだけなんじゃないかと思うよ。

(広義の)ピンハネする側にもされる側にもなる立場から言うと、ピンハネされるようなでかい仕事ではエキサイティングなことが起きて結構楽しい(そしてリスクは上が引き受ける)こともある。反面、納得の行かない方針を押し付けられて不愉快なこともあったりする。

何事にもバランスが合って、ピンハネが悪いというわけでもないと思う。ただ、元エントリで触れられているように、技術者はもっと仕事の価値を認めてもらうべきだし、業界全体が電脳土方から脱却しないと儲かる時代ではなくなってきているから、無意味なピンハネをするだけの会社はどんどん潰れていくとは思うよ。