不採算プロジェクト=見積の失敗プロジェクト

見積の失敗と一口に言ってもいろいろあります。金額の見積もり失敗、構築難易度の見積もり失敗、プロジェクトメンバーの能力の見積もり失敗、お客さんの能力の見積の失敗、ステークホルダーの見積の失敗等々。

とはいえ、大抵の見積もり結果はリスクとして金額に乗せるべき、という意味では金額の見積もり失敗に帰結します。あとは能力の問題。

ITサービス業界で不採算プロジェクトに沈むSIerが数多く出て、しかも各SIerが多数の赤字案件を抱えたのだから、これはもう個々のプロジェクトの失敗原因がどうのこうのといった話ではない。ITサービス業界全体の構造問題、あるいはSIerのビジネスモデルの問題として分析されなければならない。しかるに、ITサービス業界に詳しいはずの識者の分析は、「営業が無理をして受注した」、「技術継承がうまくいかずプロジェクトマネジメント力が衰えた」、「リスク管理に対して過信した」といった類のものばかり。

「失敗プロジェクトの理由」を嗤う | 日経 xTECH(クロステック)

こういう総括的な分析をしたがる識者の考えていることもわからなくはないんですよね。個々のプロジェクトの「見積もり時の失敗」なんてのは外野からはほぼ見えません。そうすると、総括的な結論に落ち着くのが無難になってしまいます。確かにこれらの原因ってのはいわゆる「真の原因」としてあげられるものであり、改善しなければならないのですけれども、それは会社として全社的にある程度の時間をかけて改善すべきことであって、現場のプロジェクトが上手くいかない原因としてあげちゃうってのはそれもうSIの案件やる能力ないから廃業しろよwwwって言っているようなものですよね。
「営業が無理をして受注した」ってのはもう論外もいいところで、ここでも指摘されている「戦略案件」ってのだったらまだマシくらいのものではあります。ほんと営業がバカだからおかしな数字で取ってきたってのはSE笑えない話としては定番ですからねえ。

ともあれ、問題は見積もり時にほぼ集中しています。アホな価格で受注しても苦労するのは自分たちどころか客を巻き込んで苦労をかけるという糞会社もたくさんあります。客側の見抜く力が低いというのも問題ですが、逆に言うとそういう客からきちんとボッタ…失礼、適正な価格をふっかk…失礼、提示して受注するというのが僕達の仕事なんですからねえ。

ただ、世の中見積しっかりやっておけば万事うまく行くというわけでもありません。僕の経験した事例では

  • 見積の結果受注したが、何故か他の競合の提案の一部を取り込めと言われた→基本設計後の再見積もりを提案していたのにちゃんとしていなくて炎上
  • 現行業務を知っている会社のアンダーという体制で受注して一安心と思ったらその会社が客の言いなりで業務とシステムをいかにして効率よく繋げるかに興味なかった
  • プロジェクトメンバーの協力会社要員が勝手に持ち帰った資料をウイルスで流出
  • プロジェクトのピークでインフルエンザ蔓延

まだたくさんありますが思い出すと悲しくなるのでやめておきます。ちなみに全部が直接の経験じゃないんだからねっ!

こういうトラブルはぎりぎりの見積もりをしている時に発生してしまうとプロジェクトの土台を崩壊させてしまうことはよくあります。防げるものもあれば防げないものもあります。特に新規の顧客や既存の顧客でも新規の部署って場合に起こりやすいですよね。

こういう個別具体的な話って、「原因分析」っていう目線で言うとくだらない話に見える所も多いんですよ。そんなのわかるだろ!的に。でも実際にはワカラナイことも多いです。何もかもうまくいくはずなのに、客のシステムとしては全然キーマンじゃないけど社内のウルサ方と知られる人が意味わからずゴネたせいでスケジュールが遅延したのを取り戻そうとした結果…的なことだってあるんですよ。え、そういう奴のコントロールも含めて実力だ?まあそうなんですけど、その人いなければ問題なく進行したプロジェクトだとしたらその問題を解決できなかったPL/PMを責めるのもちょっと可哀想です。

これから某社で大物のシステム構築が控えていますけれども、現場のSEやSIer自身の能力とは関係ないところで起きる問題がプロジェクトを崩壊させてしまうだろうという予想がやっぱり出て来始めていますね。コワイコワイ。