みずほ銀行の巨大システム刷新の勝算について

みずほ銀、巨大システム刷新 苦い教訓生かせるか :日本経済新聞
うーわーという感じですよね。案の定
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みんな怖がってるぜwwww

ええと、みずほ銀行の勘定系は以前報道された「業務共通基盤」だっけ?で一部の勘定系ホストの機能はすでに外出しされていますから、機能性という点で勘定系の複数アプリへの分割手法そのものは確立されていて後はやるだけなんですよ、ええ。
巨大さが必要になるのは兎にも角にも一つの勘定系HOSTに依存していたシステムを内も外も分解していくからですよね。なので、個々のシステムでみたら今までの開発に比べて超巨大ということはありません。

相対的にリスクが大きいのは、IBMメインフレーム上で富士通がアプリを開発するという何か問題が起きたら喧嘩になりそうな部分と、移行でしょう。移行って移行先の形がFIXしないとちゃんと見積もれないんですけど、システムの出来具合によって変わるんですよねこれがまた。AとB同時移行のはずがBが遅れてAが先行とかになっちゃうとじゃあその過渡期の対応しなきゃとか。既存システムは政治的にはカネを使わない選択をされていますから、こうやって後から問題が出てくるときに財布がないことも多いです。

勘定系も実際に個々の処理がやっているのは大した処理じゃないんですよ。基本的な部分としては所詮一貫性を保った形で口座からお金を移動させることがメインの処理ですし。そこの一貫性を複数のアプリがトランザクション分割された状態でも保てるかという根本的な方針に問題があったらそもそももうこのプロジェクトポシャってますし(すでに出来ているわけで)。

ただまあそうは言っても問題はたくさんあります。旧第一勧銀のSTEPSというホストが古いのがまず問題です。古いってのは大抵の場合「ろくな仕様書がない」時代のシステムなわけです。よくコードが仕様だと言って仕様書を軽視する人がいますけど、それはあくまでテクニカルな話の部分の問題であって、「なぜこれがこう書かれているのか」はわかりません。すでに販売していない商品のコードを除去するのが「リスクが有る」という理由でなされないのは世の常ですが、それが不要だということが明確になっていないとこうやってシステム更改の時に誰が使うかわからない仕様でシステムを作らされた挙句「ITケースが出来ない!(入力元ないしね)」ということになって緊急会議ですよw
「なんのためにあるか分からないけどそのロジックをとったら正常に動かないかもしれない」との戦いは不毛ですね。

でね、結構やばいやばい言われるし多分現場は色んな意味でヤバイんだろうけど、口座から金が消失するような問題は期待している向きには残念ながら起きないでしょうね。みずほの統合の時の問題にしても原因はとても小さいものだったし、いまさら仕掛けの問題でアプリがバタバタ死んでいくなんてことも起きないでしょう。もちろん、ノートラブルで終わることはないだろうけどね。

というか、東京三菱の1.8倍の規模で収まるほうが驚異的です。

ちなみに、みずほのリテールの口座数はものすごい数ですので、出来合いのシステムにはのっけられないし、そもそもメガバンクが自分たちでシステムを持つのは横並びにならないようにするためですから、これはどうしても必要な投資なんですよね。ベンダーロックインも嫌だしね。