システム屋としてのいろはをIBMに教えてもらった僕が今のIBMに思うこと

思えば、新人の頃の僕はIBMのプロジェクトと共にあった。当時、色んな意味でいい加減だった自社(今はそうでもない)ではなく、現場のIBMが僕を育ててくれた。プロジェクト管理の仕方、見積の仕方、顧客との交渉の仕方、そしてもちろん、技術を。
純粋に技術という点ではむしろ自社の先輩や自分自身の勉強がほとんどの部分もあったと思う。でも、サーバーとの付き合い方を色んな意味で学ばせてくれたのはやはりサーバーからアプリまで全部自分たちでやるというプロジェクトであったからだろう。

日本IBMの最近の営業施策を見るにつけ、日本ならではのハイコンテクストな関係を軽視しているように感じます。何十年と続いてきた手帳やテーブル・カレンダーの廃止、ユーザー組織やパートナー組織を支援する人員や予算の削減などは、確かに売上に直結するものではありません。しかし、こういう濃密な人のつながりやブランド価値を浸透させるための取り組みが、日本IBMのビジネスを支えてきたとも云えるでしょう。

日本IBMの苦悩と日本の特殊事情 2 | ネットコマース株式会社

この記事の主眼は地方で本当にIBMが上手く行っているのか、という話だけれども、最後の巨大顧客であろう銀行の現場においてもIBMの評価は凋落著しい。僕が一緒にやってきたラインの人たちはそれでも評価されているようだけれども、障害にふわっとした対応をしてしまう基盤とか、基盤と部署が違って連携がイマイチなアプリとか、余計なことを引き受けてこないことが評価されるPMとかいう話を聴くにつけ、「システム屋の仕事とは何か」という僕が教わってきたマインドがどこかに行ってしまっていることを感じざるを得ない。
真っ当なプロジェクトなら、そりゃあきつい瞬間はあるにしても、それを乗り越えることで全体としては上手くいく運用ができるはずで、ずーっときつかったプロジェクトって実は体験していない。社畜だ何だと言われる業界だけれども、本当にやらなきゃいけない局面で全力を尽くせば後は普通の生活が待っているだけ。それすらにも力を使えないのであればそれは仕事っていうか事務だよね。
顧客に対して最善を提案するべきところで自分たちにリスクを軽減する手段ばっかり選択する姿を見ていると「日本の巨大SIerは終わった」と思わざるを得ない。

現場で複数SIerが活動している時に役割分担を誰も言い出さない。言い出しっぺ負けの法則が蔓延する世界で強いSIが実現できるわけがない。というかお前らは何のプロとして高い金もらってこの場にいるんだよ。
そんなことを微塵も感じさせなかった昔僕の師匠だったIBMのプロジェクト。今そういう姿のプロジェクトを見ることは(IBMプロジェクトに限らず)殆ど無い。客に下手に出てリスクを減らす(コストは嵩んだり糞なシステムが出来たりするようなことを)言っているようなベンダーを好む客だって問題だけど(不況下で金をもらう側が強く出れないという事情を考えると客のほうが問題だが)、システム屋の本分を見失ったベンダーなぞ次の更改に耐えないクソシステムとともに滅べばいいと思ったりもする。

「安全」に「利益だけ」確保しようとする会社なんていずれ滅ぶに決まっている。そういうマネジメントしか評価されなくなったSIerが未来のビジョンを作れるわけない。