僕たちは「美味しんぼ」で食の安全を学んだ

あれだけ長くやっている漫画です。少なくとも子供の頃は面白いと思っていた。食に対する知識を深めてくれたのは間違いなく美味しんぼ
当初はある意味わりと単純な勧善懲悪ものの部分もあって、細かく突っ込めば社会通念に照らしたら問題だろwwwという部分も多々ありましたけど、得意な食の知識を活かして問題を解決するという王道フォーマットでしたよね。うん。元相撲取りとかプロレスラーが「自分の働くお店で」ヤクザをボコったりとか、中華料理屋でプライドを傷つけるクレーム入れて包丁持ちだされて平然としているとか、そういう非現実感あふれる漫画はたまに超能力者も出てきちゃうとかいうトンデモ展開も見せましたけど、そもそも海原雄山からして町のカレースタンドに入って「カレーとはなにか」とか店主に問いかけちゃうようなDQNですんでまあ仕方ないよねーって。
まあそんな食のMMRみたいな漫画のお陰で農薬の問題とか、遺伝子組み換えの問題とか、海産物の蓄積している物質の問題とかいろいろ知った一方で天然干物しか食べない猫とか自家製離乳食しか食べない赤ちゃんとかなんつーか舌がバカって幸せなんだなーと思うような話とかさ、登場人物がみんな本物と偽物を区別できてすげーと思ってたら出汁の濃いまがい物ばかりが好まれたして人間をバカにしてんのかバカにしてないのかよくわかんなかったり、マグロはマヨネーズで食べたほうが美味いとか言いつつ伝統を尊重するのが大事とか結局この漫画が大事にしているのはなんなんだろうと思ったりとかしたわけですけどね。

ようは、好みとかポリシーの範囲で食を突き詰めていくってのは「趣味として」は面白いわけですよ。

これだけ情報があふれている現在において、考える切っ掛けを作るという意味での美味しんぼの使命はほぼ終ったに等しいんですけど、連載が続いてしまった結果こういう結末(まだ終わってねーけど)に至ってしまったことはかつてこの漫画(の海原雄山ツンデレっぷり)を楽しんだ人間としては残念でならないですね。

ああ、あの空の調味料瓶に入っていた紙に書かれた「化学調味料」の味わい深さとかラーメンに無駄に悲壮感を与えるかさ、喰う側にとってはどうでもいいことを思い入れたっぷりに語るあの空気感がなかなか無い感じなんだよなあ。

料理は人をハッピーにするお仕事です、という基本から外れてしまうとやっぱり行き着く先はここなんだろうな。