泣き虫弱虫諸葛孔明 / 酒見賢一

泣き虫弱虫諸葛孔明
泣き虫弱虫諸葛孔明
posted with amazlet on 06.11.12
酒見 賢一
文藝春秋
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酒見賢一ってシリアスな作家のイメージがありましたが、これは全編パロディー調の一編。とはいえ、諸葛孔明です。一筋縄ではいきません。
殺伐としていた遠い昔、人々はどんな風に生きてきたんでしょうか。歴史書にあるような思いつめた英雄たちの姿は本当なのか。そんな疑問を解消すべく、できるだけ等身大に、いやそれ以下に(笑)描き出していきます。劉備3兄弟の桃園の誓いは繰り返し披露していく内に完全に様式化した宴会芸になっちゃってるし、趙雲微妙にハブられているし、曹操は人材オタクだし。そんな中、天下の大奇人、諸葛孔明が弟を泣かし、姉をヤキモキさせ、徐庶を適当にあしらい、奥様は発明マニア。もう向かうところ敵無し。虚名を流布し、時流を掴もうとするも、なんか結局劉備に引っかかっちゃう。
時事ネタあり仁義あり戦いあり、マカロニウエスタンあり(英訳三国志演義より。ある意味面白そう)とその筆の軽いことといったら。三国志ファンは抱腹絶倒または怒り心頭間違いなし。
SWEET三国志 (1)ちょっとこういうノリかも

星を継ぐもの / ジェイムズ・P・ホーガン

星を継ぐもの
星を継ぐもの
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ジェイムズ・P・ホーガン 池 央耿
東京創元社
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ホーガンの実質デビュー作。ハードSFの傑作でしょう。月で見つかった宇宙服を着た死体。調べてみるとその死体はなんと死後5万年も経っていた。地球に文化の痕跡もない5万年前ですから、当然これは地球人ではなく宇宙人かもしれないと疑われますが、どう見ても地球人。最先端の科学を駆使してその正体を調査する主人公たち。説得力のある仮説があらたな発見により覆されるのを繰り返す中、木星で超巨大な宇宙船が見つかり…
と言うわけで、宇宙人の侵略や、宇宙空間での戦闘が行われるでもなく、謎解きに奔走する人々。一つのアイディアによってこんなにも我々の想像力を刺激し、ワクワクさせてくれる。もっともSFらしいSFと言って良いでしょう。
これが書かれた当時はSFとファンタジーの境目が揺らいでいる時代でしたが、こういった「ハードな」SFの作品群により、現代SFの一つの基盤ができたように思えます。個人的には冒険スペクタクルSFも好きですけどね。