某所より、色々と思うこと。

気になるエントリが複数上げられていたのでまとめてコメント。

その一

Blogging Code of Conduct: la_causette
匿名コメンテーターですよどうせ。でも匿名はネットの常識とかってみんなが言ってたっけ。

「フラット化」の意味を取り違えて礼節を書く内容・文体のコメントを投稿するあまたの日本のコメンテーターさんたちとの立脚点の違いは明らかです。

無礼を常に許容することを求めていないし、O'Reillyのスタンスを持って欧米のネットの常識と言わんばかりのコメントもいただけませんね。

Web2.0というのは、匿名さんによる誹謗中傷を容認して建設的な議論を諦める環境を指すのではないことがよくわかります。

それWeb2.0と関係ないし。

また、 「We won't say anything online that we wouldn't say in person.」(我々は、面と向かっていえないことは、オンラインでもいわない。)としており、「匿名でないと言えないことを言うこと」こそがブログの本質だと考えている日本の匿名ブロガー・コメンテーターさんたちとは大きな一線が画されています。

ただ、この点については考えさせられます。匿名をブログの本質と考えているかはどうかとして(いつも思うのですが、なんで十把一絡げ?)。じゃあ海外の人は匿名でブログを書かないのかというと、大手サイトでの風刺的な記事を書く匿名な人はいっぱいいるし、やっぱり周囲との軋轢を避けつつ本音を語る場として匿名のブログは活用されています。これはスタンスとして実名で書けることを書く、という人が多いというだけであることを示しているし、また、匿名で書いても相手を実名としてあげて訴訟になったときにとことん追い詰められますから単なる自己防衛の手段としての匿名はあまり有効ではないことがわかっているからかもしれません。結局、無用なトラブルを避けつつ本音を書くというのは難しいんだよね、って話なんではないかと思います。
例えば、僕なんかは今、自分が書いていることを実名で書いたとしても大きな問題は無いかもしれないけれども、それでも読んで僕が言った、ということで不快になる人が現実にいるかも知れないし、ネタも書きづらい。有用な情報を発信しているってだけならともかく、考え方とか、世の中に対するスタンスを発信しているわけで、身近な人に伝えたいわけでもなく、ターゲットはネットに広がる誰だかわからないけど共感できる人たちなんですから尚更実名で書く意味が無い。面と向かってなら言えることすら言えないという場合もありますよね。無用な軋轢は生じない方が望ましい。誤解であってもそれを解消するコストはただではないのですから(弁護士的にはそういうばかばかしい依頼とかが増えたほうがいいのかな?)。
誹謗中傷なんてしなければいいし、したらちゃんと代償を払うようになっていればよい。でも痴漢詐欺みたいになるのは勘弁。そこを担保してくれないと実名実名って言われてもね。まず、世の中を被告になっただけでは日常生活に支障がないように変えてくれないと。面と向かって言っても訴訟にならないのにちょっと書いたら揚げ足取られて訴訟とかぞっとしない話ですよね。

その二

「犯罪行為となる書き込みを知りながら放置する自由」をBBSに認めるべきか: la_causette

プロバイダ責任制限法を制定する際にも、「常時監視義務を負わせることは妥当ではない」ということは前提とされていましたが、「犯罪行為となる書き込みを知りながら放置する自由」を認めなければ「掲示板を開設するということ自体にも萎縮効果が生じてしまう」ということは斟酌されていなかったわけで、町村教授は今更何を仰っているのだろうという疑問を私はぬぐい去ることができません。

言っている意味がいまいち理解できないのですが、つまり掲示板を設置して旅行中に荒らし書き込みにあって、でも旅行中だから帰宅してから削除しようと思いそれを放置していたら帰宅後逮捕されるようなことを許容せよとおっしゃるんでしょうか。さすがにそうじゃないか。十分に措置を取ることができるのをしなかったということを対象ケースとして想定しているのであればまあそうでしょうけれども、町村教授の言いたいのはどっちかというと

書き込みの内容や「被害者」の属性、そして掲示板管理者の認識の程度、書き込みの反復度合い等(他にも色々あるだろうが)、様々な観点から幇助が成立する場合を絞り込んで明確化していく必要がある。
そうでないと、過剰防衛的削除がはびこるし、

news:BBSの中傷を放置したとして書類送検: Matimulog

こっちじゃないのかなあ。で、常にこれを意識し、書き込みを監視し、荒らしに厳正な対処をしないと掲示板自体に悪意が無くても管理者の名誉毀損が認められるのであれば、設置に対する萎縮効果は十分あると思いますけれどもね。なんで放置する自由とかいう謎の権利を主張していることになるのか。放置の要件を明確化しろという話だと思うんだけど。

その三

新聞とネットの関係について: la_causette
これは短い記事ですが、感銘を受けました(匿名論以外は結構面白いと思うんだけどな、小倉先生は)。新聞は依然としてある程度の有効性を持っていると思っています。そして、ある程度の分析能力と文章能力を持った人が解説を書いてくれるというのは非常にありがたい点ですね。もっとも中にはいわゆる匿名さんの解説よりも程度の低いものも相当数混じっているとは思いますが。確率的に合理的だというのはそのとおりで、ただ、記者や解説者よりももっと専門知識を持った人がウェブで実名で解説してくれていたりもするので侮れませんよね、ネットも。もちろん、分野として技術関連には強いがそれ以外はそもそも発信している人が信じられるのかどうかの基準すら明確ではないことがありますから、そういう点でも新聞と言うフィルターを上手く使って行きたいものです。