体感治安の悪化?

asahi.com:治安は回復?悪化? 犯罪白書と学者が論争。数字は指標に過ぎないし、逆に指標としては重要なんだけど、解釈を誤ると何も得られない。それはともかくとして、ここで言われている体感治安って本当に悪化しているんだろうか。
昔のほうが監視と言う意味では厳しかったように思える。何しろ、コミュニティーの中で隣人たちに監視されていたのだから。
「あの人昼間っからぷらぷらしているけど何してんでしょうね」「どうやら作家先生らしいわよ」「そういえばあそこの息子さんいじめられているらしいってうちの息子が」「ちわー、三河屋です」「あ、Aさんち留守らしいわよ」「じゃあ裏口に置いときますか」
そんな社会。会話に参加しない人はよそ者か変わり者として監視されるし、すぐ話題に上る。近所の公園で幼女と遊んでいても「誰々君のお父さん」というのがわかっているから通報されない。けれど、いろいろなことが地域に筒抜け。こっそり変な趣味も持てない。宅配便のお兄さんからばれちゃうしね。場合によっては地域に爪弾きにされる家庭も出てくる。
悪化しているのは治安そのものなのかというと、実はそうじゃないと思う。地域コミュニティーが崩壊したことで、犯罪に対する孤立感が人々を不安にさせているのではないだろうか。いざプライバシーを守ってみたものの、問題が起きたときに誰も守ってくれないような不安。また、監視社会に対する漠然とした不安。昔の監視と違って、ある団体に委託した監視は例外を許さない。その情報が蓄積されることによる不安もある。
自分の身は自分だけで守らなきゃいけないという殺伐としたプレッシャー。昔だって犯罪は多かっただろうし、絶対数も減っているはずだから、変わっているのは人々の気持ちの持ち様だろう。自ら守るべきものが多くなりすぎたのだろうし、許されざることも多くなったのだろうね。