戦争について

多くを語るすべはもたない。生存競争の延長が戦争を生んだとして、人間がその知性の多くを競争に費やしてきたのは、それが生きるために必要なことであったからだろうし、本能の為せるものだったのだろう。時が21世紀に到って、生存競争としての戦争が果たして有るのかどうか。イデオロギーのための戦争は人類にとって不要なものに思える。そのことを認識してそれでもなお、戦争が止まないとしたら、人間の本能は、あるいは動物としての本能は、戦うことにあるからなのだろうか。
戦うことが、長い目で見て自分のためにならないとしても、その場を何とかするために戦わなくてはならないとしたら、それは不幸なことだ。
戦うことが、自らを証明するための行いだとしたら、現代の知的活動には一体何の意味があるのだろうか。
本能を自律する事を文明と呼ぶのであれば、まだ人類は真の文明を手にしていないのだろう。