博士の愛した数式 / 小川洋子

博士の愛した数式

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博士の愛した数式 (新潮文庫)

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先日ポアンカレ予想を追い求めるドキュメンタリー(これもなかなか良かったのだけど)を見たせいかどうかわからないけれども、ふと図書館で手に取った。もちろん、この小説のことを知ってはいたのだけれども。
美しい。80分しか記憶の持たない博士とシングルマザーの家政婦とその息子。淡々と流れゆく時間。数学の美しさ。
あまり難しい話が出てくるわけでもない。むしろ、数学に全く興味のなかった主人公の家政婦が少しずつ惹かれていく数学の世界は単純にして明快だからこそ美しい

「正解だ。見てご覧、この素晴らしい一続きの数字の連なりを。220の約数の和は284。284の約数の和は220。友愛数だ。滅多に存在しない組合せだよ。フェルマーだってデカルトだって、一組ずつしか見つけられなかった。神の計らいを受けた絆で結ばれあった数字なんだ。美しいと思わないかい? 君の誕生日と、僕の手首に刻まれた数字が、これほど見事なチェーンでつながり合っているなんて」

数学とは、究極的には人類の思考による最もシンプルな詩なのかもしれない。