Music for Battle Creek 〜The Brass Band Music of Phillip Sparke

[rakuten:bandpower:10003469:detail]
Phillip Sparkeといえば吹奏楽界では知らぬ人がいないくらいの超有名作曲家なのですが、元々はブラスバンド(いわゆる英国式金管バンド)の作曲家で、今もそちらが活動の中心です。もっとも、大抵の曲は吹奏楽にも編曲されますが。
90年代の半ばはやっつけ仕事気味といっては何ですが、粗製濫造気味(とはいえ名曲も書いているけど)だったのですが、2000年を過ぎてどうも初心に帰ったというか、昔の曲のエキサイティングな感じを円熟の筆で描くというような曲が増えてきて、初期の曲のファンとしては喜ばしい限りです。
さて、このアルバムの目玉はやはり2曲のコンテストピース、「Dance and Alleluias」と「Music for Battle Creek」でしょう。

Dance and Alleluias

2006年から始まったEnglish National Brass Band Championshipsの第一回課題曲として書かれた曲。このコンテスト自体は始まったときには賛否両論な感じでしたが、課題曲としては気合が入っています。あえて言うなら「21世紀のHarmony Music*1」。先の大作「Music of the Spheres」でモノにした書法を大胆に駆使して組み立てなおされたような、そんな曲です。Partitaの断片的なものもあり、ああ、あのスパークが帰ってきた、というような感じ。
2楽章のシンプルなメロディーのソロが激展開大転調にたどり着くときのカタルシスといったら。
Black Dyke Bandの演奏も素晴らしいけど、コンテストの際の優勝演奏(これはFoden's)の迫力も捨て難いなあ。優勝演奏、CDにならないものか。抱き合わせDVDしかでていません…
[rakuten:bandpower:10003325:detail]

Music for Battle Creek

「Harmony Music」、「Between the Moon and Mexico」に続く"The National"課題曲3曲目です。元々アメリカのプロバンド「The Brass Band of Battle Creek」のために書かれた曲ですが、アメリカ初演の前にコンテストピースになってしまったと言う…
すごく緻密な構成と美しいメロディーで出来ているのですが…なんか地味?Tutti強奏の時間が短いからかも。起伏の激しい曲ではあります。
3楽章の複雑に絡み合ったメカニカルなRondoといい、Sparkeっぽくもあり、ぽくもなし、とにかく曲の全体感はとてもカッコいいのです。こう、もうちょっと、あと一歩、押しが強ければ…。非常に玄人好みの曲ですねえ。

総じて、少し前に見られた安直な(ポップな)フレーズに逃げずにしっかりと考えて書かれたいい曲ばかりのアルバムでした。

*1:Sparkeの代表作にして(British)National Brass Band Championshipsの課題曲