スルガ銀行とIBMの関係とNEFSSの失敗

増田が気にしているのは匿名ぶっちゃけトークが聞きたいからなのかな?僕は直接関わったわけではないけれども、同じ業界で働いているので漏れ聞くところから推測出来る範囲(=やばくない範囲)でちょっと言及してみよう。

2chで幾つかスレ立ってて、パッケージビジネスの困難とかがブログで語られていたりもするけど、増田では話題にならないのな。

スルガ銀行とNEFSS

関係の議論は上記から飛んでみて。
一応2chのスレの途中でまとめが出ているのでおいとく

(1)NEFSSは、SAPのような各業務アプリまで既製品のガチガチのパッケージではなく、
  どちらかといえばシステム基盤やフレームワークに近いパッケージ
  基本機能を提供する基盤やモジュールの上に、業務要件定義に従ってJ2EEで
  アプリを書いていくタイプ
  つまり、かなりカスタムが必要なアプリ

(2)日本の銀行の勘定系パッケージで有名なのは、富士通のPROBANK、NECの
  BankingWeb21、NTTデータのBeSTA、日立製作所のNEXTBASE、ほかにUNISYS
  BankVisionなどが主流であり、IBMのNEFSSは世界的にもユーザ事例のほとんどない
  新製品
  日本IBMは、勘定系を構築するよりも、三菱東京UFJ銀行の地銀共同化システムや、
  八十二銀行などのじゅうだん会のように、銀行自身が主体となって開発した勘定系
  を保守運用するほうがメインで、勘定系開発に関しては新参

(3)NEFSSの国内実績
    スルガ銀行:開発中断→訴訟
    東京スター銀行:開発中断
    住信SBIネット銀行:2007/09サービス開始

(4)スルガ銀行の問題に関しては、もともとカスタムしなければ使えないパッケージだし、
  ユーザがあれこれ要求を出すのは当たり前
  要件定義がダラダラと行われ、やり直しまでしていることからも、日本IBMに
  勘定系開発の技術力とプロジェクトマネジメント能力が欠如していたのは明らか

【裁判】 静岡県の地銀「スルガ銀行」が日本IBMに111億円の損害賠償を求め提訴 基幹システムの開発遅れで…東京地裁

NEFFSとは

ぶっちゃけSAILをJavaで実装したものに業務コンポーネントを付け足したもの。SAILは方式制御の発想としては優れているし、IBMマシンで基幹系をやっている人は理解が簡単だろうから、銀行に受け入れられたのだと思う。

IBMスルガ銀行

2chでは「MUFGの仕事干されたから慣れない地銀に手を出して失敗したんでは?」という話もあったけど、IBMとスルガはかなり深い関係があると聞いている。すなわち規模的にも中堅で、新しいものに手を出してくれるので、IBMは実績作りの為にスルガ銀行パイロット導入を(安めの金額で)行って、そのノウハウを横展開しているというもの。
今回も、NEFSSの実績として足りない「業務パッケージ」の部分の日本的銀行業務へのカスタマイズをスルガで作って展開しようという思惑があったと思われます。基盤部分はアメリカでも実績十分だけど、業務はどうしても日本独自部分が多く存在するから。
なお、カスタマイズが必要なほど独自なのは日本市場の閉鎖性とかそういうのではなくて、IT先進国だったために何もない状態からシステムを作ってしまった(作れてしまった)ために、それにかえって縛られている、という事情があるからだと思います。中堅以下の地銀くらい口座が軽ければがばっと作り変えはできるんだけど…

トラブルの背景とIBMの方針

こういう「戦略的開発」が最近認められなくなってきた。IBM外資だけど日本IBMは日本的、といわれていたのは最近までで、グローバル戦略として本国が口を出してくるようになって、今までのようなビジネスのやり方が背任だ首だといわれるようになったせいで結構人が減っているのと、プロジェクト計画時点で黒字を出さなければならないので今までみたいな値引きが出来ないし、工程ごとに事前に合意した内容で、また、契約を締結した後でないと絶対に動かない、という状態(業界内ではユーザー無視との声も大きい)になってしまったのですね。で、丁度このプロジェクトが始まった2004年末というのはその話が厳しくなってきた時期。

そんなわけで、当初のお互いの思惑とのずれを埋められないままずるずると進んでしまった結果として、作業が停滞してしまったのだと思います。もちろん、プロジェクト遂行面で他の要因はたくさんあったんだろうし、単純にどっちが悪いとは外部から見てあまり言えない感じだけどね。
正直なところ、パッケージビジネスの難しさ、という観点よりも、いわゆる日本的SI開発の一つの終焉としての出来事と捉えるべきなのかな、と思います。SIerもユーザーも変わっていかないのであれば、日本はIT投資コストの面で諸外国に置き去りにされるんじゃないかという危惧はあります。