新興ウェブメディアの耐えられない軽さ

NHKを退社した堀潤氏が創設した8bitNews(名前がダサい)、黒船来襲的な勢いがあるかと思ったらなんだかオーマイニュースの空気感が漂うハフィントン・ポスト(今なお人の名前がついているあたりがなんとも)と、新興メディアが話題になっている昨今です。と言っても、「え?この人達大丈夫?」的な話題が先行しているというところが残念なんですけどね。

8bitNewsなんて、

誰もが一次情報発信者になれる時代。既存のマスメディアによって濾過された情報とは対局にある発信がそこにある。

通信・ITニュース(NTT、ソフトバンク、イー・アクセス)

なんてうたっちゃってます。ウェブ黎明期のメディア批判は主に捏造・誘導・隠蔽についての批判が多かったと思いますが、「きちんとした取材」「デマの濾過」という機能について否定されていたわけではないんですよね。ただ、問題のほうがクローズアップされがちだし、実際に問題が起きた時の責任をきちんととってないことからの信頼性低下なんていうところがポストマスコミの必要性をみなに感じさせたわけです。
ところが、無濾過で情報発信してメディアを名乗ろうとする8bitNews。これは根本的なことがわかっていない(NHK出身にしてはね…)という評価をせざるを得ません。誰でも情報発信できる時代、あえてメディアを名乗るサイトを利用しなくても情報発信できるわけですから、メディアと名乗るサイトが果たす役割はそれが一般の参加を企図しているのであれば、いわゆる「デスク」でしょう。
既存マスコミの問題点としてみんなが抱えているのは例えば広告の問題、思想の問題などによってあえて報道しなかったり、あらぬ方向への誘導を行ったりすることへの不満などですよね。そういったバイアスのかかっていない視点がほしいのは確かなんですが、だからといって明らかな嘘や知識不足・勘違いに基づく誤った情報なんてのはいらんわけですよ。もっというと、そういうのに騙されやすい人に対してそれを提示しないことも一つの役割なわけです。垂れ流しでよしとするのは単なる動画投稿サイトでしかなくて、メディアを名乗る資格はないんじゃないでしょうか。
一応問題になるようなものは削除しているらしいけど、後付ではなくて、サイトとして載せるべきもの載せないべきものの判断基準を明確にした上で、筋が通った対応をする、という手続きを作ってほしいものです。

一方、ハフィントン・ポスト。これはまだまだよくわかりません。逆にコチラはフィルターをかけるのに手間取って寄稿が掲載されないという声が沢山聞こえてきます。もっともこっちのほうがその点健全かとは思いますが
元々ゴシップ誌的な要素からスタートした本家ハフィントン・ポストは政治力が無視できないレベルの存在になっています。メディアとしての成功は取材力に基づいた信頼出来る記事の掲載が基礎となるべきかと思いますが、日本語版には今のところまだそういう空気を感じないですよね。単に個人ブログの記事の集積みたいな感じで、特段メディアとして何かを提示しているようにも思えない。
それ以前に、「ハフィントン・ポスト」で検索して今日現在Googleさん検索結果に日本語版サイトが出て来ません(あるいはだいぶ下の方?)

かつてのオーマイニュースの失敗は鳥越編集長の責によるところが大きいとはいえ、悪質な市民記者を排除できなかった問題も大きいわけですね。8bitNewsは今の時点ですでにその二の轍を踏もうとしています。

組織の力ってのは想像以上に大きなものです。「メディア」として市民を組織化する試みが失敗してきたのはそれが組織ではなく目的を共有しない烏合の衆だからという部分は大きい。新興メディアが「単一の」メディアを目指す必要もないわけだから、それぞれのメディアは思想をはっきりと定義し、それに見合った人材を実績も踏まえた判断により採用し活動してもらうというのが必要なんだと思います。こうやって力をつけたメディアが沢山ある、というのが理想的です。とにかく素人の投稿を集めてさも既存メディアが語らない真実があるかのように提示するジャーナリストごっこをしている限り、ゴシップサイトの域を脱することはできないと思いますし、仮にそのまま力を持ってしまったら(ユーザーが思っているほどは力のなかった)2ちゃんねるよりも悪質なサイトになってしまうこと請け合い。少なくとも教育機関からのアクセスはフィルタリングすべき、というレベルに今はあると思っています。

もっとも、だから潰れてしまえ、というわけではありません。理念自体は素晴らしいと思うので、仕組みを伴わせて欲しいというのが僕の願いです。