SF読みが楽しめる珠玉のミステリー10選

どうもはてなー界隈(はてな村人?)はSF者が多すぎるのかしらということで、折角のエントリーが寂しいことになっているので支援的に盛り上げて行きたいと思います。
というわけでまずはこちら。
読んでないと偉そうな事は語れないレベルのミステリ小説10選 - あざなえるなわのごとし
ええ、なかなかのラインナップ。8割読んでるかな…
僕もロジカルな思考を好みますが小説読むときにあまり頭を使いたくないのでミステリーは読者としての「犯人探し」をするというよりは、どんでん返しを素直に楽しむ、というような読み方をするんですよね。そんな嗜好の人が適当に好きなものを選ぶというのは前回と変わらず。ここ5年くらい新しいのは読んでないのでちょっと古いかも。海外ミステリ多め。ではではスタート。

1.「すべてがFになる森博嗣

すべてがFになる THE PERFECT INSIDER S&Mシリーズ (講談社文庫)

すべてがFになる THE PERFECT INSIDER S&Mシリーズ (講談社文庫)

大学の友人に卒業旅行の機内で借りた結果初日のホテルで読破するはめになったという代物。「理系ミステリの金字塔」と呼ばれたりもしますが、個人的には何が理系ミステリなのかよくわからないんですよね…というのがSF者としての態度ですねw
これは実はミステリというよりは耽美小説なんだと思うんですが、「7は孤独」という言葉が印象的でした。登場人物が天才だらけなので感情移入できませんが、そのセリフについては僕も幾度か引用したことがある通り物事の本質をざっくりと切り開いて見せてくれるようで、ある意味グロいです。

2.「七回死んだ男」西澤保彦

七回死んだ男 (講談社文庫)

七回死んだ男 (講談社文庫)

そんなこんなでミステリに新世界を発見した僕に最初に訪れたフィーバーはこの人。だってミステリなのにSFで超能力でしかしロジックの塊なんですよ。不可思議な事象を登場させながら、そのルールを提示し、フェアに謎を解き明かしていくという西澤流本格は大変おもしろいです。最近の作風のほうが元々の思考なのかもしれませんが、この初期の作品群の面白さってのはまた別なんですよね。「神のロジック、人のマジック」でそういう路線取り戻したかと思ったら最近はなあ…

3.「鋼鉄都市アイザック・アシモフ

鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)

鋼鉄都市 (ハヤカワ文庫 SF 336)

それはSFだろ?って言われるかもしれないけど、ジャンル分けをあえてするならミステリだと僕は思っています。アシモフのミステリと言えば「黒後家蜘蛛の会」がとても好きなんですが、それ読めば分かる通り、ちょっとした謎が思いもよらぬ背景を持っていて〜みたいなのが大好きですよね、アシモフ。自分自身で提唱したロボット工学の三原則を逆手に取ってミステリとする。それだけでも面白い。

4.「奇術師」クリストファー・プリースト

これもある意味SFといえばSF的なミステリですがというかプリーストはそういう筋立てを好んでいますね。SF作家だし。
映画化もされているけれども、肝心の大枠のところが異なっているため味わいがかなり違います。二人の奇術師がやりあう様はSFマインドを刺激されますよね。

5.「占星術殺人事件島田荘司

占星術殺人事件 (講談社文庫)

占星術殺人事件 (講談社文庫)

世の中が社会派ミステリに染まっている頃、このようにアナクロニズムに満ちた作品が評価されなかったのはしかたがないけれども、この作品がなければ新本格の幕は開かなかったかもしれない。大ネタで、某漫画のパクリのせいで有名になりすぎちゃったけれども、この荒削りな作品のテイストがロジカルでありながらどこかファンタジックである島田荘司の作品のすべてを表しているようです。最近の作品も「ええ、そんなんあり?」と思いつつも強引に説得させられてしまうかのような思考の畳み掛けは慣れると気持ちいい。あ、これが作者のベストってわけではないけどね。

6.「イリーガル・エイリアン」ロバート・J・ソウヤー

イリーガル・エイリアン (ハヤカワ文庫SF)

イリーガル・エイリアン (ハヤカワ文庫SF)

いやそれもSFだろ?うん。でもこれは法廷ミステリだしね。ファーストコンタクトの最中に発生した殺人事件の容疑者は当のエイリアンでした。さて、主人公の弁護士はどうやってエイリアンを弁護するのか。本当にエイリアンが犯人なのか?犯人だとして人間基準で罪に問えるのか?
なかなかいろいろな問題をはらんでいる問題作ですね。

7.「コーマ」ロビン・クック

コーマ―昏睡 (ハヤカワ文庫 NV 326)

コーマ―昏睡 (ハヤカワ文庫 NV 326)

「ジェラシックパーク」のマイケル・クライトン監督で映画化もされている医療業界ミステリ。クックは医療・病原菌を扱ったミステリを沢山書いていますが、未知の病原菌による恐怖や倫理の問いかけなんてのは実にSFっぽいところですね。

8.「羊たちの沈黙トマス・ハリス

羊たちの沈黙 (新潮文庫)

羊たちの沈黙 (新潮文庫)

プロファイリングという言葉を一気に広めたサイコミステリの金字塔。これでFBIの科学捜査に対する関心が一気に高まりましたね。でもやっぱり面白いのはレクター博士の脱出行ですよね。想像すると相当キモイですが…

9.「ミステリ・オペラ」山田正紀

ミステリ作家としての山田正紀は個人的には技巧に走り過ぎかなという欠点はあるものの、その書法の絢爛さ、繰り出される世界はさすがSF作家でもある作者の本領なのかと思っています。逆に言うと、え?そういうオチ?的な拍子抜け感がメインの部分であることは否めない。作られた世界を楽しむ事ができるのであればぜひ。現実感覚を求める人にはオススメできません。
同じ幻想的世界でも綾辻行人京極夏彦のそれとはだいぶ趣が違っていますね。

10.「ハサミ男殊能将之

ハサミ男 (講談社文庫)

ハサミ男 (講談社文庫)

最後は最近惜しくも亡くなられた作者の代表作。このデビュー作は大ネタ一発、多分好き嫌いはとてもわかれるだろうし、本格にすれてしまうと早い段階でトリックに感づいてしまうかもしれませんが、初めて読んだ時に「あああ、なんでそんな単純なことに気づかなかったのか…」と思った記憶は忘れがたいです。ここでは代表作ということでこれを上げましたが、この作者の本領であり問題作はやはり「黒い仏」でしょう。読者という神の視点からなんともムズムズし、小説世界に手を差し伸べたくなってしまう。そんなおかしな気持ちが醸成されます。



うーん、10作にテーマを決めて絞るのって難しいですね。正直脱線しているような気がします。個人的には面白ければ面白い、ランクとか関係ない、という人間なので、また機会があればお気に入りを紹介してみたいですね。