ユーザー企業はITベンダーを駆逐できるか

よく楽天のことをIT企業って言われることがあるけど、楽天はIT活用企業であって、ITベンダーではないよね、という話。
ただ、「ECプラットホーム」をITの基盤と考えると、楽天はITベンダーということができなくもない。
実のところ、ITベンダーってもう何年も前から非常に曖昧な存在ではあります。SIerっていうほうしっくりくる。ハードもやるSIer(IBM富士通、日立、etc)と基本ソリューションをやるSIer(NTTD、ISID、etc)と、パッケージベンダー(Oracle、SAP、etc)って区分けがあって、絡み合いながらSIの仕事をやっている感じ。

SIの仕事はユーザー企業のシステムを作ることだから、「SIの」って考えると

ユーザー企業がITベンダーの事業領域を侵食したり、ITベンダーを買収したりすることが当たり前の時代になるということだ。つまり、ユーザー企業の“IT企業化”が進み、既存のITベンダーの手ごわいライバルとなるのだ。

ユーザー企業がITベンダーを駆逐する | 日経 xTECH(クロステック)

という部分は確かにそうだなって思う。というか、もうそうなっている。
ただ、そういう状況にも関わらず、いまだSIの仕事があるのは、「他社のサービスに乗っかったらサービスで差別化できないじゃない」っていう意識がまだまだ強いから。これは日本の会社がパッケージの業務プロセスをそのまま使わない理由の一つでもある。つまり、「業務プロセスがわが社の強み」って思っている会社がすごい多いんだよね。これは正しいこともあれば間違っていることもある。どっちかというと間違っているほうが多いかもしれない。でもあんなに「空気嫁」な社会と言われる日本において、「標準に則る」ことを蛇蝎のように嫌う文化があるというのもまた真実。

じゃあ、ITベンダーって何やればいいの?SIerってなにやればいいの?って言うのはもう10年来の課題。現実的に独立系SIerも吸収合併でだいぶ少なくなってきた。
こういう指摘もある。

見ての通り、売上高上位の企業の過半はユーザ系、ないしはユーザ企業がシステムソリューションベンダに転向しているわけで。。。
元々、情報サービス業界自体がユーザ系のベンダーによって拡大し続けている現状が見えます。

ユーザ企業がITベンダーを駆逐できず、ユーザ系ベンダの一員となる未来 - プロマネブログ

けどまあ、ここで言われていることには若干異論はある。ユーザー系ベンダーって言っても出自だけでもはや元のユーザーのほうを向いていない会社もたくさんあるし、このエントリで言われているような「業務ドメインの壁」ってのはそんなにあるとは思わないんだよね。だってNTTデータって今や「ユーザー系」って思っている人だれもいないし、あらゆる業種(得意はあるにしても)に手を出しているし、指摘にあるような「証券やってない」なんてこともないよね。

話を戻すと、「ユーザー企業に駆逐される」という危機感は、つまり、「SIの仕事ってもう少なくなるよね」という危機感の中で、ユーザー企業がプラットホーム商売し始めるとめんどっちいという話。もう売れるのは「システム」じゃなくて「サービス」だよねという認識は大きな間違いではない。「システム」であれば、ユーザー企業が業務を握っているところにぶら下がった仕事ができるけど「サービス」だと…
でも、実はITベンダーもそれまでにやってきた仕事をパッケージ化して提供するということは繰り返しやっているんでね。問題はユーザー企業を「競合他社」とみなすことができない立場。ITベンダーがSIerであろうと思い続けたら、業界をドラスティックに変える「サービス」の提供は難しいかもしれない。

いうなればこの問題は「既存顧客を持ったITベンダーのジレンマ」という問題でしかないし、ITベンダーも自分が危機となったら容赦なくユーザー企業を喰いにかかる可能性はあって、でもまだそこには至っていないという微妙な時期なのが今の状況なだけじゃないかな。

ただ、この危機感を常に抱えていないとお仕事なくなっちゃうよね、というのは結構厳しい現状なんじゃないかな。