マクドナルドにおけるQCDとは何か

60秒で提供します!できなければ無料券!ってのは単なる無料券キャンペーンだと思っていたんですよね。みんなが待たされることを期待するという効果が望めるからです。と思ったけど、よく考えたら待たされて得をするのは今そこでカウンターに立っている人だけで、並んでる人にとっては自分の番がこないというマイナスの方が大きい可能性がありますよね。
で、どうなったかというと…作業が雑になったという…これは失敗ですね。
QCD(Quality,Cost,Delivery)というものを考えた時に、消費者側の立場からするともちろん「うまい、やすい、はやい」であって欲しいわけです。とはいっても、この要素は釣り合いのとれた水準にあれば概ね文句が出ません。
QCDは本来生産管理の話なんですが、わかりやすいので消費者目線でいっちゃいましょう。
「味はまあまあだけど安めで普通の時間で出てくる」
「超ウマイけど高いし遅い…」
というのが世の中の摂理です。ところが、たまにそれをぶち壊すものが出てくるんですよね。
「超うまくて安い!めっちゃ並ぶけど…」
いいんです。バランスブレイクしていても得られる価値が釣り合いがとれていたり、ある価値が突出していることはニッチな部分では重要です。別の例。
「この品質でこの速さ。まさに超特急…しかし値段は高額すぎて…」
印刷頼むときとかも特急便だと高いじゃないですか。これも需要に対しての適切な価格である、という例です。

じゃあ、マクドナルドに僕達が置いている価値ってなんなのさ、と考えてみましょう。まずは主観で。
Q:うまい?うーん、そこまでじゃないかな。まあまあ。値段相応。
C:安い。安いイメージがつきまくり!コミコミで400〜600円くらい
D:早い。速い。"Fast"フードなんでしょ?
ハンバーガーに物珍しさがあった時代に比べたらもう特別なものではない以上、人々は商品価値にシビアになっていると思います。マックのキッチンはしばしば改良されていきますし、今は少なくとも注文を受けてから作るという建前(当然だけどパーツは先に作ってあります)を守っていますが、それによって生み出している価値が果たして値段に対して等価か。レギュラーメニューであればまだしも、シーズンメニューもこの注文を受けてから作るスキームの中で、そのシステムの限界値の中で調理をしなければいけないので品質にも限界があります。なのに、高い。これはアンバランス。
一方で、速いということについてそれほどのメリットを客が感じているか。実はそんなでもないんじゃないかって思うんですよね。速いが重要なのは、薄利多売の「多売」を実現するための売り手側の事情である、というのはカウンターメニュー排除事件の時に看破されていましたが、客側にとっては60秒という閾値になにも価値を見いだせないというのが事実です。これって単に「混んでる時は回転率のために雑に作っても許してね!」という話にしかなりませんよね。いや、食い物ですからあんまり雑に作られるといくら早くても品質を毀損してバランスが崩れます。
ということを踏まえて考えると、食い物だということを考えても
「うまくて安いならちょっとくらい遅くてもいいけど…」というところが消費者のニーズかと思います。「安い」を何とかしたかったら「速い」ではなくて「うまい」の方にシフトしなきゃならないんですよね。
ところが、カウンターメニューの話も踏まえると、どうもマックは「速い」を追求することでそれをカバーしようとしているのではないかという疑念が。
確かに、ライバルのモス?ロッテリアですらそうだと思うけど、マックより客単価が高めですよね多分。そうすると、マックの強みは安くて速いに落ち着いちゃう気がするし、業績を上げるためにはさらなる回転率の向上を考えなければならないわけですね。マックの回転率を上げる意味はピーク時にいかに客を引きこむかのためだけにあるといえますから、結構深刻な話ではあります。

でもなー。マックのこりゃあかんってところはもうちょっと根本的なところなんだと思うんだよな。食い物屋として。
ビッグマックとか、チキンタツタとか、ああいうのを見てるとほんとそう思うんだけど、なんで刻んだレタスやキャベツ入のハンバーガーを「箱」で提供するのか。ポロポロポロポロポロ溢れるじゃないか!

商品開発の人は果たして自分たちの商品を愛しているのだろうか。そういう疑念が出てきてしまうのがここ数年のマックなんだと思うんだけどなあ。

開き直って「ネトゲ脳」なる本をだす人

出版不況だとかなんとか言われているけどさ、出版業界ももうちょっとなんとかリテラシーなるものを身につけないとどんどん出版業というものの価値が毀損されていくよ!
森昭雄氏の新著『ネトゲ脳 緊急事態』に驚く人たち - Togetter
爆笑したのはこれ

いやいやいやいやまてまてまてまて。

これは後で原文をチェックしなければ…意訳で十分な気がするけど自分の目で確かめないと…

落ち着いて煽りを見てみましょう。アマゾンから。

ネトゲ脳 緊急事態

ネトゲ脳 緊急事態

内容(「BOOK」データベースより)
世界で急増するインターネット&ゲーム依存者。IT先進国の韓国では、多発するネット関連事件に、国を挙げて予防・治療体制を確立しつつあります。韓国の最新画像診断や脳科学の進歩では、ネット&ゲーム依存者の“ネトゲ脳”が麻薬中毒者の脳と酷似しているとの報告も。日本ではやっと国立病院でネット依存治療部門ができたばかり。“ネトゲ脳”の増殖はとめられないのか!子どもたちの脳の機能不全をこのまま放置していいのか!今できることは、目の前の緊急事態を知ることなのです。

マジか!ネット依存治療部門なんてのができたのか!どこだそれ…

ここでした。

久里浜医療センター|ネット依存治療部門(TIAR)

近年のインターネットの普及、およびそのサービスの発展はいちじるしく、わが国でもインターネット嗜癖(本治療研究部門では一般的な「ネット依存」という用語を使います)におちいる人々の増加がけねんされています。我々の2008年の調査によると、20歳以上でネット依存が疑われる者は全国で270万人にのぼることが推計されました。となりの韓国や中国では長時間連続してオンラインゲームを利用して死亡する事故も起きており、大きな社会問題になっています。アメリカでもインターネットに長時間をついやすことから離婚や解雇など深刻な問題が起きており、その治療に注目が集まっています。しかし、わが国ではネット依存の治療に専門的に取り組んでいる施設はまだありません。このため、当院では、長年の依存症治療でつちかった専門性をもとに、2011年7月よりネット依存治療研究部門(TIAR)を開設し治療を開始しました。当センターでは、ネット依存治療を行うとともに、ネット依存に関する研究と最新の治療情報収集にも取り組み、よりよい治療を提供してまいります。

久里浜医療センター|ネット依存治療部門(TIAR)

久里浜医療センターというのはどういう施設か。

政策医療分野における精神疾患の基幹医療施設

国立病院機構久里浜医療センター - Wikipedia

ふむふむ。ようは依存症専門ですな。

インターネット依存というのはそもそもあるのか、ということが疑われてはいます。インターネットそのものはあくまで媒介でしかなく、そこで実現されている何かに依存している、という点で。ただ、インターネットが個人の承認欲求、自己肯定とそれを実現するための絶え間ない価値の提供に一枚噛んでいるのは確かです。そういう人はインターネットから隔離し、そこにあった価値が失われる(たとえば、アカウント削除)ことによって、憑き物が落ちるか絶望するかのどちらかの結果になる可能性はありますけどね。単にインターネットで自己実現をするのが方法としては楽だからハマるんだ、という人がたくさんいそうですが、それこそ数字も何も語れないので保留しておきましょう。

本に戻ると、もう紹介文の時点でおかしい。
「ネット&ゲーム依存者の“ネトゲ脳”」
完全に適当な定義ですね。いわゆるネトゲという言葉の定義を全く無視していますよね。これって「ネット及びゲームにハマった脳」の略語ですよね。ネトゲにハマった、ではない。
ゲーム脳は依存症と言うよりはゲームが性格に及ぼす影響を妄想した話でしたが、ネトゲ脳は依存性についてきちんと書かれているんでしょうか。単にインターネット依存症というだけではインパクトが無かったのかもしれませんが、こういう適当な言葉を使われると内容も適当だと見做されることが想像できないのは何脳っていうのかしらん。

ちょっと帰りに本文をのぞいてこよう。