開き直って「ネトゲ脳」なる本をだす人

出版不況だとかなんとか言われているけどさ、出版業界ももうちょっとなんとかリテラシーなるものを身につけないとどんどん出版業というものの価値が毀損されていくよ!
森昭雄氏の新著『ネトゲ脳 緊急事態』に驚く人たち - Togetter
爆笑したのはこれ

いやいやいやいやまてまてまてまて。

これは後で原文をチェックしなければ…意訳で十分な気がするけど自分の目で確かめないと…

落ち着いて煽りを見てみましょう。アマゾンから。

ネトゲ脳 緊急事態

ネトゲ脳 緊急事態

内容(「BOOK」データベースより)
世界で急増するインターネット&ゲーム依存者。IT先進国の韓国では、多発するネット関連事件に、国を挙げて予防・治療体制を確立しつつあります。韓国の最新画像診断や脳科学の進歩では、ネット&ゲーム依存者の“ネトゲ脳”が麻薬中毒者の脳と酷似しているとの報告も。日本ではやっと国立病院でネット依存治療部門ができたばかり。“ネトゲ脳”の増殖はとめられないのか!子どもたちの脳の機能不全をこのまま放置していいのか!今できることは、目の前の緊急事態を知ることなのです。

マジか!ネット依存治療部門なんてのができたのか!どこだそれ…

ここでした。

久里浜医療センター|ネット依存治療部門(TIAR)

近年のインターネットの普及、およびそのサービスの発展はいちじるしく、わが国でもインターネット嗜癖(本治療研究部門では一般的な「ネット依存」という用語を使います)におちいる人々の増加がけねんされています。我々の2008年の調査によると、20歳以上でネット依存が疑われる者は全国で270万人にのぼることが推計されました。となりの韓国や中国では長時間連続してオンラインゲームを利用して死亡する事故も起きており、大きな社会問題になっています。アメリカでもインターネットに長時間をついやすことから離婚や解雇など深刻な問題が起きており、その治療に注目が集まっています。しかし、わが国ではネット依存の治療に専門的に取り組んでいる施設はまだありません。このため、当院では、長年の依存症治療でつちかった専門性をもとに、2011年7月よりネット依存治療研究部門(TIAR)を開設し治療を開始しました。当センターでは、ネット依存治療を行うとともに、ネット依存に関する研究と最新の治療情報収集にも取り組み、よりよい治療を提供してまいります。

久里浜医療センター|ネット依存治療部門(TIAR)

久里浜医療センターというのはどういう施設か。

政策医療分野における精神疾患の基幹医療施設

国立病院機構久里浜医療センター - Wikipedia

ふむふむ。ようは依存症専門ですな。

インターネット依存というのはそもそもあるのか、ということが疑われてはいます。インターネットそのものはあくまで媒介でしかなく、そこで実現されている何かに依存している、という点で。ただ、インターネットが個人の承認欲求、自己肯定とそれを実現するための絶え間ない価値の提供に一枚噛んでいるのは確かです。そういう人はインターネットから隔離し、そこにあった価値が失われる(たとえば、アカウント削除)ことによって、憑き物が落ちるか絶望するかのどちらかの結果になる可能性はありますけどね。単にインターネットで自己実現をするのが方法としては楽だからハマるんだ、という人がたくさんいそうですが、それこそ数字も何も語れないので保留しておきましょう。

本に戻ると、もう紹介文の時点でおかしい。
「ネット&ゲーム依存者の“ネトゲ脳”」
完全に適当な定義ですね。いわゆるネトゲという言葉の定義を全く無視していますよね。これって「ネット及びゲームにハマった脳」の略語ですよね。ネトゲにハマった、ではない。
ゲーム脳は依存症と言うよりはゲームが性格に及ぼす影響を妄想した話でしたが、ネトゲ脳は依存性についてきちんと書かれているんでしょうか。単にインターネット依存症というだけではインパクトが無かったのかもしれませんが、こういう適当な言葉を使われると内容も適当だと見做されることが想像できないのは何脳っていうのかしらん。

ちょっと帰りに本文をのぞいてこよう。