フレームシフト / ロバート・J. ソウヤー

他人が頭の中で考えていることが聞こえてしまってまともに交際のできない女性。しかし、偶然出会った相手は思考がフランス語。意味が分からない心地よいBGMとしか聞こえないその思考のおかげで伴侶を得たテレパシストの女性が活躍する冒険譚。
…嘘です。いや、ほんとではあるんだけどそんな話ではありません。主人公はその旦那。不治の遺伝病を抱える遺伝子研究者。あるとき自分が陰謀に巻き込まれている事に気付いた彼はいくつかの出会いからそのわけを探り出します。病気が進行する中、妻の特殊能力のDNA的な特性から重大な発見をするいっぽうで自分の遺伝子を伝えないため提供してもらった精子で受精させたはずの子供に異変が。そしてついに黒幕と対決し…
と書くとやっぱり冒険譚ですね。とにかく、この主人公ともう一人、WW2時代のナチの犯罪者を追う捜査官を中心に話が進んでいきます。SF的な要素はテレパシーともう一つ、現在の技術では成せないクローン生成。どちらも核のアイディアと言うよりは話の肉付けに使われているような感じで、SFというよりは犯人探しのミステリ(しかも事件・テレパシー・子供についてのそれぞれ)であるので、設定にさえ違和感が無ければSFとしてじゃなくとも読める気がします。ラストもすっきりまとまって読後感がよいですね。なんとなく予定調和的な気がするのもあまり減点にはならない感じです。
フレームシフト