楊家将 / 北方謙三

男クサイ。北方節なので筋の通った男たちがこれでもかとばかり出てきます。実際こんなにカッコいいわけねぇ。と思いながらこの素晴らしいまでのキャラ立ちに引き込まれてしまうのが作者の筆力と言うものです。
楊家将ってのは日本ではなじみがないが中国では(主に芝居系で)大人気のお題目らしく、宋王朝建国時の遼との戦い(いわゆる燕雲十六州をめぐるあれですな)で活躍した楊家の凄まじさと哀しさを書いた演義物です。なぜ日本で人気がない(というかそもそも訳本がない)かというと、後半妖術魑魅魍魎が跋扈するお決まりの展開になってしまって史実ともずれ過ぎてうんざりしてしまうからと言うことらしいです。余談ですが、アメコミってそんな感じですね。最初安定していた世界が他の漫画のキャラとリンクさせる(そもそもこれが作品世界ぶち壊しなんですが)過程でどんどんおかしくなってったり。
で、北方先生、比較的しっかりしている楊家1〜2代目のところを若干原本を改変しつつ小説にしたのがこの作品。楊業と7人の息子たちの個性の書き分け、敵役の孤高の将軍白き狼」耶律休哥の生き様、文治主義の宋における軍人の覇権争い、様々な要素を2巻にしっかりと詰め込んでするすると読ませるところが素晴らしい。徒に長くならないところがよいところです。ちょっと斜に構えた4男がお気に入り。
クライマックスで「えー、ここで終わっちゃうの?確かにすっきりはするけどあれとかあれとかどうなるの?」と思っていたらどうやら続編が出るらしい。

楊家将〈上〉 楊家将〈下〉