バブル後遺症今だ癒えず

asahi.com:請負会社への出向「違法」 厚労省、松下電器を指導へ
いくらなんでも「正式に偽装請負しますよ〜」と宣言してやって問題になるっていうのは酷すぎますが、経営陣が企業における「社会的責任」を全く省みず、会社の利益にのみ忠実になっているという何よりの証拠であるといえるでしょう。短期的な業績を重視し、株主の利益にのみ奔走するのはしかし、銀行が安定株主になり、長期的視野で、社会貢献をしながら広く国民に利益を還元するというかつての日本の経営がなりたたないことでもあります。そして、これは勝ち組負け組みの二極化を推進する仕組みです。
短期的な視点で経営を行うと、生産量の増減によって、もっとも影響があるコストは人件費ですから、固定で多数の人員を抱える正社員化は避けたいという本音、これはよく分かります。そこに対応するために派遣という業務があります。しかし、派遣も法改正により、勤続すると正社員で雇う義務が生じます。業績が好調なときは長期で雇うことになりますから、正社員が増えてしまう。

そもそも偽装請負って何?

そこで請負契約を行うわけですが、請負先は当然生産ラインを持っているわけありませんから、実質派遣されてくるわけです。しかし、ラインを借りてやっているという形にすれば

  • 自社で
  • 請負元の指示を受けず

生産するという体裁をとることは可能です。請負は

  • 契約で決められた成果物を
  • 契約で決められた納期に

納品することが請負元とのお約束です。
ところが、実際には、請負元の社員からああしろこうしろと言われます。そりゃ請け負った先も技術的ノウハウがあるわけじゃなくて、作業員を出しているだけですから。じゃないと自分ところで大企業に負けない製品を生産できちゃいます。かくして、偽装請負が完成するわけです。今回の問題は、指示を出す人が請け負い先の社員なら問題なかろうということで出向させてしまったところで、そりゃあ資本関係も何にもない会社に出向って意図が見え見えですよね。

人々の犠牲の元で上げる利益

企業の側も短期的な業績を上げないと「もうあそこはダメだ」とかつるし上げられる以上、利益を出す仕組みを考えなければなりません。変動リスクにまず目が向くのは当然です。しかし、一方で人を雇うという責任を抱えているということを忘れて欲しくはありません。このままこの傾向が改善されなければいつか来るであろう今負け組みと呼ばれている人たちの親の世代という肥沃な大地を食い荒らし、その先に残った荒野で商売するという時代を想像して欲しいものです。もちろん、企業だけの責任ではなく、政治の問題でもあります。誰がちゃんと考えてくれているのだろう。