JASRACに歌詞をストリーミング配信と言い張る権利はあるか

これはちょっとどうかと思ったので、周辺の議論とか法律とか規約を調べている暇はないもののとりあえず脳内設定で書いてみる。

JASRAC「プリント可能ですか…。すると、扱いとしては『ダウンロード形式』となりますので、1回あたりいくら、という課金になります」
米 林 「は? いや、音楽データではなく、歌詞のテキストデータなんですが(しかも歌の一節)」
JASRAC「はい。この場合は『可視データ』という扱いになります」
米 林 「(納得いかねぇ)…で、どれくらいなんですか」
JASRAC「情報料なしで広告ありですから、1回6・6円ですね。広告なしだと5・5円です」
米 林 「1『回』って…それ、現実的ではないんですが…」
JASRAC「まあ、アクセス数で決める、ということになりますね」
JASRAC「ただ、印刷制限をかけるとすれば、区分が変わります」
米 林 「どのように?」
JASRAC「印刷できないとすると、その場で見るだけですから『ストリーム形式』(ストリーミング配信)の扱いになります」

http://blog.hokkaido-np.co.jp/yone-b/archives/2007/04/post_10.html

問題は、歌詞から「楽曲と同じ」基準で使用料を取ることができるか。今までも漫画や小説の中で瑕疵が引用された場合、「JASRAC許諾番号〜」ってのを見たことと思いますが、これは歌詞がJASRACの管理する著作物に該当するからです。だから、許諾が必要いうのはまあ間違いではありません。ところで、こういうのはどうでしょう?

既存の著作物を楽曲の歌詞として借用

もちろん原著作者及び版権所持者の許可済みでの話ですが、この場合、JASRACは歌詞のテキストとしての著作権を持っているわけではなく、あくまで楽曲として流れた場合に歌詞の分の著作権料を著作権保持者に払うことになるのでしょう。あるいは、メディアを規定した上での包括契約を結ぶか。もとのテキストの著作権ごと移転するということはあまり考えられません。
とすると、このときにテキストとして引用される著作物は引用の要件を満たしていればJASRACの許諾は要りませんよね。引用の要件を満たさず使用したい場合は、もとの著作権者と個別に交渉することになります。
しかし、全ての版権をJASRACが管理しているとすると、この場合はJASRACの規定する手数料を歌詞というテキストに課すことはなんら問題はありません。

引用の要件についての見解

しかし、JASRACは歌詞の引用は基本的には要件が成立しない方向で全て捕捉したいという方向であるように見えます。引用の要件を満たしているかを争って(裁判以前に)JASRACが折れたという事例はいくつか見られますが、単に「使いたいから使った」ことに対しては必要以上と思われるほど厳しいです。しかしWebに発信するという行為がPublishである以上はある程度仕方のないことと思われます。
つまり、引用したいのであれば、それが引用の要件に合致することを証明出来るだけのロジックを作ってから出ないと難しいと思われます。

使用料とストリーミングの問題

とはいえ、あの使用料は、正直なところナンセンスです。印刷物は部数という概念がありますが、ウェブページのPVというのは先に決まるものではないし、納得感のないものではありますね。
それより、ストリーミングという概念がテキストに通用するかがまず問題です。先に述べたように、歌詞のテキストとしての使用形態と、楽曲中で歌われるという使用形態は明確に区別すべき(でないと、他の著作物から持ってきたときに適用できない)ですから、テキストがストリーミングという概念をほぼ持ち得ない著作の形態であるのにそれを適用するというのはスタート地点の発想が間違っています。

一体全体、どういうロジックでストリーミングという話になったのか、誰か詳しい人いませんか?(と他力本願で〆る)