手に負えない非論理的国民感情

A「正直にいって国民の怒りのガス抜きを狙った選挙対策の側面が強いのではないか。このような半強制的な、ボーナス一律返納措置は法律に基づいた処分ではなく、行政のトップの意向を優先させた超法規的対応といえる。やるべきことをはき違えているという印象が強い。本来、公務員の場合、法的に懲戒処分の対象とならない限り減給はできない。このような懲罰的「自主的」返納は賛成できない、原因究明の作業を完遂させ、責任の所在を明確することがまず先ではないか」
木「同じ公務員としてのその法律論は尊重するが、しかし国民は納得できないだろうね。だって、もし社保庁が民間企業だったらどうなると思う? ボーナス返納どころの事態では済まないでしょ、どこぞの食品会社じゃないが、間違いなく、経営者は処罰、会社自体の倒産の危機に直面し、大量の解雇者が出たことだろう。国民感情としては、賞与の2分の1から20分の1の額の自主返納なんて、甘っちょろいとしか思えない」
A「うーん、国民感情としては理解できる。が、責任の所在がファジーなままの状態なのにこのような日本独特の連帯責任論は、問題点をあいまいにしている点で私は感心できないといっているんだよ、法律論からも極めて疑わしいしね。長年所属してずさんな仕事に関わった人間、中には言語道断だが受け取った職員が着服したケースもある、そのような犯罪行為を犯した人間、組織自体は問題があったろうがその中で真面目に職務遂行につとめてきた人、昨年や今年入ったばかりの何も責を問うべきではない新人職員、職員の中にはいろいろな人がいるんだと思う。まず犯罪行為も含めた悪質な職員を特定し、その責任の所在を明確にすること、その上で、個人の責任、組織の責任を明らかにしていく、そのようなステップを無視して、原因究明の作業を完遂させぬ前に、社保庁に所属しているという理由だけで連帯責任だと一括ボーナス返納をトップダウンで決めることはどうなのか」
木「何だかな、民間零細企業オヤジとしては納得いかんがな、私などは、社保庁職員など、全員半永久的にボーナス全額返上、退職金全額返上でもかまわないと思っとるがね」
A「半永久的にボーナス全額返上かよ(苦笑 やれやれ、非論理的国民感情ってやつは、手に負えないなあ(苦笑」

年金不明問題:「やれやれ、非論理的国民感情ってやつは、手に負えないなあ」〜国家公務員の諸君、君たちは「公僕」なのですぞ! - 木走日記

国民感情が論理的であることはあまり聞かないのですが、「お役所っていいよなー、内部でたくさんの人が不祥事起こしても潰れないもんなー」と言うところから発する「ボーナス返上しろ」的発想は十分論理的だと思ったりします。無理難題だけどね。でも感情が生じるメカニズムとしては全然非論理的じゃない。
昔の出来事を今の人が責任取るってのはたとえば戦争責任とか賠償とかだってほにゃらら条約とかで決着が付いてても蒸し返されたりするわけで、それに比べたら、未だ不祥事が現役で続いている部分で、責任がある人しか責任取りません的な発想が感情的に受け入れられるわけはなくて、しかも、今までのお役所の不祥事は結局責任の所在が曖昧なまま調査終了してほとんど誰も責任を取らず、スケープゴート首切りくらいで終わっちゃうものね。そういう経験上、本当に責任の所在と、正しい責任の取り方ができるようになるまで半永久的にでもボーナス減らさないと同じ展開で終わりそうだから、そうした方がよいんじゃって思っても仕方ないよね。
潰れちゃ困るから大目に見られているだけで、決して許してもらっているのではないことに気付いて欲しいんだけど。