ある土俵

切腹はレトリックであるとして。「男の熱き戦い」を望んでいた挑戦者は王者に蹂躙された。公開処刑であった。その上がってしまった土俵のあまりの認識の差異が数々の反則行為ににじみ出ていた。
無論僕は挑戦者を肯定し得ない。ボクシングとは何か、と問う。人間が許されるぎりぎりの私闘であると思う。許されるためにルールがある。逸脱した時点で強さや弱さの評価など出来なくなる。それでも、僕はどちらかが倒れ伏す結末を望んでいたのかも知れない。
いずれにせよ、世界戦ではなかった。