文化を守るためって一体なんなの?

またしても携帯で書いたエントリにアクセスが集まって若干凹み気味のnovtanですこんばんは。なんだろう、余分なことを書くのが面倒だから簡便になるってのがいいのでしょうか。ちなみに風邪はまだ治りません。げほげほ。
前のエントリで特に言いたかった点についてちょっとだけ補記してみます。

反商業主義を掲げて商業主義の論理で消費者を制限している。Culture Firstが寝言にしか聞こえないのはそのせいだ

すでに我々は、文化至上主義の名の下に余分なお金を払っている - novtan別館

これね。反商業主義なのであれば、業界団体は手弁当でもいいから文化の発展に尽くすべきなんだけど、実際にはコストが掛かるものは切り捨てている。一方で、税金や教育の費用を使った図書館なんかには資料として残されていることがあるわけで、どちらがより文化を守っているかなんてのは一目瞭然です。

我々がデバイスの進化で得た利益を補償金で還元することを求めるならば、業界側にもデバイスの進化により今まで消費者に与えてきた文化的な損失を補償する義務があるだろう。

すでに我々は、文化至上主義の名の下に余分なお金を払っている - novtan別館

あとはここ。ハードウェアやシステムの進化が消費者の側に一方的な恩恵を与えているか、というと、そうではない。例えばインターネットを例に取ると、Amazonロングテールを掘り起こしたように、また、BtoBからBtoCへと取引の仕方が変わって言ったりと、ものを売ったり作ったりする側にも恩恵があるわけです。iPodにしても、音楽を手軽に持ち歩くファッションを拡大したという功績があり、それに伴って音楽業界が得たものはあるはず。
むしろ、ハードウェア的な制約、例えば、音楽を流通させるには従来メディアに載せるしかなかった。例外として放送はあったんだけど、それは不安定で固着させづらい形での流通。なので、メディアのコストというのは全体に織り込むしかなかった。当然、売れないものは赤字を生むし、倉庫代だってバカにならない。結果として廃盤になるのはやむなし、ということで受け入れられてきた。これは、消費者側としては不利益だ。だから、新しい流通の仕方でこういった制約が取り払われるのであれば、業界は積極的に方法を提案しなきゃ。だって業界のためと思って我慢して私的録音補償金を払っているんだから、それを適正な形で還元するのが業界の仕事でしょ。
結局のところ、業界がいうところの「文化を守る」っていうのは、文化を巡る商業構造を守るってことに過ぎないのですよね、これだと。大体、文化っていうのが何か、というのは誰が決めるのか。僕らが決められるの?インディーズは文化じゃないの?ウェブで趣味の作曲を公開している人は文化と言えないの?それともそういう人にも分配する?
大ベストセラー作家や、大物作曲家が、取るに足らない駄作を物したとき、それは文化といえるのでしょうか。しかし、今の商業構造では、きっと売れに売れて、また一つ、後世に残らないものにお金が費やされるかも知れない。それはね、文化ではなく消費です。単なる。そして、その中の一部は文化として後世に残ることでしょう。文化を守るなんておこがましい。文化的活動ではあるのです。ただ、別に今の文化的活動にお金を使ってもそれがどう評価されるのは後のことなのですから。RIAJの主張によると「レコードは文化財であり一般消費財とは異なります。」なのだそうですが、何が文化財であるかなんてね。
少なくとも、今の社会では文化的活動は商業行為からほとんど離れられない。あるいは、売れない文化は別の手段、例えばアルバイトしてその金をつぎ込むとか、本業が別にあって趣味でやるとか、といったところに支えられているわけです。これもある意味では商業主義。そして、そのことは、別に悪いことではありません。むしろ文化の何たるかをわかっているともいえる。本当にいいものが世に出るかどうかなんて、運です。多分18世紀の音楽家だって、小説家だって、運悪く埋もれてしまったいいものを残しているでしょう。いいものが、ちゃんと残るかなんてわからない。けれども、残ったものは大切にしようとする。それが文化を守るってことであって。
でも商業活動としての「文化を守る」ってのはあってもよいです。きっとそこから何かが残っていくことでしょう。でも、それはCulture Firstなんてスローガンからは絶対出てこない。文化は高みからは生まれないでしょう。

ブクマコメントに反応

shiranui copyright 再販制度と値下げに関する日本レコード協会の報告書→http://www.riaj.or.jp/all_info/saihan/saihan7.html

おおっと、ありがとうございます。ざっと読んでみましたが

  • 大部分の商品は再販期間2年が6ヶ月に⇒新譜にはそんなの関係ねぇ
  • 非再販CDが約1700タイトル(比較のためCD+DVD除く)で激増⇒新譜CDタイトル数が約18000タイトル。まだ10分の1
  • 多種多様な設定が引き続き行われている⇒焼き直し低価格、寄せ集めコンピ、プロモーション戦略価格が中心

という印象です。ちょっと穿った見方かもしれませんが、特に最後の点についてはジャズCDの「XXbitマスタリング」旧譜商法には飽き飽きしましたのでそういう感想。

hidea 著作権 言いたいことはともかく,なんで日本人は自己主張して終わりなんだろう? パプコメなんかは言って終わりの範囲内ね。欧州とかなら本気で運動が起きそうなもんだけど

というわけで、言うだけではしょうがないな、と思ったのでMiAUに参加してみましたよ、と。