そして世界は発狂した

相次ぐ凶悪な犯罪。ゲームのシーンを再現した大量殺人。マンガの影響を受けたとみられる猟奇殺人。小説をモデルにしたと思われる幼女監禁事件。アニメを模倣したと思われるコロニー落とし(???)
凶悪犯罪を防ぐために文芸書の類は全て検閲を受け、犯罪的要素が無い場合にのみ出版が許される。しかし、むしろ規制後の世界は凶悪犯罪が増加していた。人々は妄想で頭を溢れさせ、耐え切れなくなって現実においてそれを発散するのだ。
「つまり、犯罪を描写するクリエイターたちが犯罪予備軍だったということかな」
「しかし、著作物を発表させることで、犯罪を誘発させたという統計は否定し難いものがあります」
「犯罪気質を区別することが出来れば片っ端から事前に捕まえてやるのにな」
そんな折、研究所では一つの成果が上がっていた。ついに人の思考を信号として捉え、再生する技術が生み出されたのだ。運動指令をつかさどる信号が解析されてから100年あまり。科学は人間を解き明かすための大きな一歩を踏み出した。科学者達は自らの知的好奇心に溢れた思考を言語化して喜んでいた。思考のスピードで記述ができるなんて夢のようだ。
程なく。極秘裏に。とある監獄において。…。
…。実用化の高いハードルを越えたとき、事件が起こった。
「そろそろ上に報告せにゃならんよな。犯罪防止が目的なのだから、いつまでも極秘研究ではいられないだろう」
「しかし、今日視察してる大臣はそろそろ任期だ。きっと次の奴だろうな」
「偉い人ってのはどんなことを考えているんだろうな。」
「!」
「!!!」
これも極秘裏に設置されたスキャンゲートを某が通ったときにそれは起こった。いや、正確には何も起こらなかったのだが。何を信じてよいか分からなくなった2人は実験の失敗を悟り、科学者達を抹殺し、犯罪小説を片手に自殺した。
世界が破壊衝動を抑えきれなくなった某国の大統領の核ミサイル発射指令を引き金に滅亡する3年前の出来事。