QCDとトレードオフ

生産管理の現場では常識のQCD。Quality(品質)、Cost(費用)、Delivery(納期)の頭文字をとったものです。
SIの世界も製造の世界ですから、これらが重要になってきます。ところで、サービスを提供するに当たってこの3つを満たすために我々は努力するのですが、どうしても限界があります。品質を上げようとするとコストと時間がかかり、費用を圧縮しようとすると品質が犠牲になり、納期を早めようとするとコストがかかる上に品質が怪しくなります。そんなの努力で何とかしろよ!っていっても限界があります。
建築なんかや製品なんかでは「コストを下げたらあからさまに部材の質が悪くなった」とわかって発注主も納得するものですが、システムにおいての部材は結構お手製というか、職人の成果物なんですよね。つまり、コストに対して原料の占める割合が低く、作業の占める割合が高いということ。よって優秀な職人を雇えば品質は上がりますし、ぼんくらな職人を雇えば安く出来るかも知れないけど品質は低い。あるいは、一定の品質のものを大量に作ればいいとき、優秀な職人を雇えば早く終わります。
ところが、ぼんくらな職人しか雇えない値段で早く高品質なものを作れ、という要求が来るのです。何しろ出来たものの評価がちゃんと出来ませんから、どっちが作っても対して変わらないように見えるんですよね。
サービス提供者が提示できるQCDを高めていくのは提供者側の問題ですけど、それを超えた成果を要求することで全体のバランスが崩れ、結果、悲惨な状態になってしまうわけですね。
何がいいたいかって言うと、限られたリソースをどう配分するかって話ね。こういったトレードオフはどういったジャンルでも発生することではあります。全体最適化ということに単純化するわけではないです。目的を明確化した上で、得られないものは諦める。だから、目的が適正かどうかが一番の問題なのです。同じ命題であってもシチュエーションによって目的は異なることでしょう。
例えば、経営合理化の最中だから次世代戦略システムの目的は費用圧縮ね、と言ったときに「構築費用」を圧縮しても意味ないんだけど、ついつい「出来るだけ安く作ってくれ!」みたいな話になりがちです。そうじゃなくて、次世代システムによって今の業務プロセスの無駄や余分な費用を圧縮できる、あるいはシステムのメンテ費用を落としてトータルで「経営の健全化」や「利益の拡大」を目指さないと「費用圧縮」の意味がないことが大半だと思います。そもそもその目的の為に「次世代システム」が必要かどうかも本当は検討しなきゃならんですよね。